長崎弾丸観光

 

 

浦上天主堂。二百年間禁令により隠れていたキリシタンが再発見された場所。

 

「九州地方は、明日も非常に高い気温が予想されます。不要不急の外出は避けてください。」

ニュースや天気予報で、繰り返し警告が発せられている。僕は、博多駅前のビジネスホテルにいた。その日、七月二十七日の土曜日、甥のYくんと、その家族に会うために、京都から福岡に来たのだった。

甥は、娘が亡くなった時、葬儀で流す追悼ビデオを作ってくれた。「見た人は必ず泣く」という、なかなか感動的なビデオだった。甥は、ウェディングフォトグラファーで、ビデオ作りは本職なのだ。その時、彼は金を取らなかった。

「じゃあ、今度福岡に行ったとき、ご馳走するからね。好きな物を、好きなだけ食べていいよ。」

と僕は約束。その日は、彼と奥さんと息子さんを、活け魚料理店に招待して、金沢に続き、豪華魚料理を食べてきたところだった。奥さんのR子さん、息子のZちゃんとは初対面であった。

 博多駅前のホテルに戻って、翌日の計画を立てた。福岡を発つのは明後日の月曜日。明日は福岡観光をするはずだった。しかし、この気温では、ちょっと屋外での観光は無理。

「そうや、列車の中は涼しい。列車に乗ろう。」

と僕は思い立った。それで、列車で長崎まで行き、帰ってくることにした。途中、武雄温泉から長崎までは、西九州新幹線が開通しており、博多から一時間半で長崎に行けるのだ。

 翌朝、僕は朝七時半発の「リレーかもめ」に乗った。「リレーかもめ」は一時間ほどで武雄温泉に着く。そこで向こう側のホームで待っていた新幹線「かもめ」に乗り換え。三十分ほどで、九時に長崎に着いた。どうしてそんなややこしいことになっているかと言うと、途中の佐賀県が新幹線の建設に反対しているため、長崎県にしか新幹線が敷設できないのだ。 

 時刻はまだ午前九時過ぎ。そのまま戻るのももったいないので、少し観光してみることにする。長崎は、ほとんどの場所に市電で行けるとのこと、市電の一日券を買って、まずは、浦上天主堂とグラバー園に行ってみることにする。市電の中は冷房が効いて快適。しかし・・・降りてからが暑かった。

「暑っちっち。長崎とシンガポールは似ている。」

と僕の独り言。すごく密度の濃い太陽光線が、真上から照り付ける感じ。それでも、僕は三時間かけて、市電を乗り継ぎ、浦上天主堂、グラバー園、ペーロン選手権会場、中華街、出島、めがね橋と回った。「ペーロン」というボートのレース。漕いでいる選手も、見ている観客も、この暑さの中、

「ホンマようやる。」

と思う。

 十二時になって、さすがにギブアップ。十二時半の新幹線で博多に戻ることにする。二時ごろ博多に着いた後、僕は駅前のサウナで午後を過ごした。こうなったら、「もっと暑いところで、もっと汗をかきましょう」って感じ。でも、気持ち良かった。

 

 

グラバー園から、港を見る。風光明媚な町だが、熱帯の太陽が・・・

 

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