B級グルメの王者、コロッケ
コロッケ、とても懐かしい味。
七月十九日から二泊で、金沢に行くことになっていた。ここ三年ほど、二週間に一度、僕は、金沢大学のK名誉教授が主宰されている、「オンラインドイツ語講座」を受けている。この講座、結構レベルが高くて、少しずつ人数が減り、今のところ生徒は四人。僕以外は全て金沢にお住いの方である。六月の授業で、七月に僕が日本に帰るというと、
「じゃ、モトさんも含めて『オフ会』をしよう!」
ということになり、十九日に夜に、「大お食事会」が開かれることになったのだ。
僕は金沢大学に行っていたし、また妻の故郷が金沢なので、京都と金沢の間を、少なくとも百回は往復している。これまで、京都から金沢には、特急「サンダーバード」で乗り換えなしで行けた。しかし、今年四月に北陸新幹線が、金沢から敦賀まで延伸されたことを受け、金沢へ行くには、敦賀で新幹線に乗り換えねばならなくなったのだ。
「不便やなあ。要らざることを。」
それだけが理由ではないが、僕は今回、京都から金沢まで、初めて高速バスを使うことにした。時間は、列車の倍近くかかるが、乗り換えはない。別に急ぐ旅でもない。夕方までに金沢に着いていればいいのだから。加えて、料金は列車の半分。
その日の八時半、僕は高速バスで京都駅を出発した。バスは東寺の塔を尻目に殺し、京都南インターから名神高速、米原からは北陸道に入る。僕は最前列の席を予約しておいたので、前面の景色を楽しみながら乗っている。
運転手が一人なので、一時間半ほど走ると、サービスエリアで二十分くらいの休憩が入る。トイレはバスに付いているので、別に「トイレ休憩」というわけでもなく、あくまで運転手が長時間運転するのを避けるための休憩。最初の休憩は、名神黒丸サービスエリア。バスを降りると、三十度を超える空気に包まれるが、バスの中の冷房が効きすぎているので、かえって心地よく感じる。
「なになに、近江牛を使ったコロッケ?」
僕はひとつ買って食べてみる。
「うまい!ホント、こういう所で食べるコロッケて、最高。」
僕は往復、バスが停まる度に、コロッケを買って食べていた。
十二時半ごろにバスは金沢駅前に到着。駅前のデジタル温度計には「三十五度」という表示。京都も、山鉾巡行の頃からだんだん暑くなってきたが、金沢も結構暑いんだ。その後、妻の実家に到着。義母と話をしたあと、五時半ごろにタクシーで、野々市という隣町にある、お食事会の会場に向かう。僕が六時ギリギリに日本料理店に着くと、K教授と三人の生徒さん、その中のSさんの奥さんが既にお待ちであった。Sさんは僕がドイツで働いていたころの同僚で、Sさんとは、僕の妻も含め、家族ぐるみで親交が深い。そして、その日食べた、魚料理の数々は、文字通りの美食、グルメであった。
わ〜お、食べるのがもったいないくらいのご馳走が出てきた。