クリスマスへのカウントダウン

クラーク家の人々。お金持ちじゃないけど、清く正しく美しい家族である。

 

クラーク家の食卓の上には、四本の蝋燭が立っており、そのうち一本だけ火がついている。ドイツではクリスマスの四週間前、「アドベンツツァイト」入ると、四本の蝋燭が用意される。四週間前には一本だけ、三週間前には二本、二週間前には三本が点灯される。そして、一週間前には四本!ドイツ式のクリスマスへのカウントダウンである。

クラーク家には、四人の息子、娘がいる。僕がマーブルクに住んでいたころ、互いの家が近かったため、うちの子供たちと、クラーク家の子供たちはいつも一緒に遊んでいた。時が過ぎ、その子供たちも皆大人になった。クラーク家では、昨年、末娘のレナーテが結婚、一昨年、次男のアレックスが結婚している。

「写真、見てやってくれる?」

アルバムが目の前のテーブルにドーンと置かれる。他人様の結婚式の写真、はっきり言って、見ていてそれほど面白いものではないのだが、この場では見ないわけにはいかない。こちらでは、まず市役所の住民登録課(Standesamt)でセレモニーがあり、それから教会でのセレモニーがある。アレックスの市役所での結婚式の写真を見ると、正装の花婿、花嫁に対して、相手をする市の職員はジーンズ。いくら職場での服装がカジュアルなドイツでも、もうちょっと何とかなりまへんか?

昼寝から目覚めたお父さんのクラーク氏と話し、ミリアムの子供たちとレゴの消防署で遊んだ後、四時過ぎにクラーク家辞す。

「もうフローエ・ヴァイナハテン(メリー・クリスマス)って言って良いの?」

と玄関でミリアムに尋ねる。

「もうアドベンツツァイトから良いのよ。」

と彼女。

「じゃあ、フローエ・ヴァイナハテン。」

「フローエ・ヴァイナハテン。」

僕は皆と頬ずりをして別れた。

 五時前に、ジギとマーゴットの家に戻る。彼らの家のリヴィングルームの真ん中には、薪を燃やすストーブがある。片面がガラス張りになっていて、燃えている火が見える。ジギとマーゴットが夕飯の支度を始める。少し手伝ったが、大部分の時間、僕はピアノを弾いていた。一応もっと手伝うと言ったのだが、ジギがあっさりとそれを蹴った。

「モトはBGM係でいいの。」

 夕食はカブラのスープとシュニッツェル(トンカツ)、サラダに白ワイン。カブラもサラダ菜も、近所の有機農場から配達されたものだと言う。

 夕食が終わり、三人ともソファに寝転んで、ワインを飲みながら話をする。彼らは来年の復活祭休みにニューヨークへ行くという。外は雪景色、暖かい室内、チロチロと燃える火を見つめながらの会話。くつろぎの一時。

 

ストーブに点火をするジギ。

 

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