シャーロットの荷物
部屋を片付けるポヨ子。何故か本棚にクリスマス飾りが。
セント・ジョンズ・カレッジに戻る。スミレとマユミは、服をクローゼットに吊るすなど、荷物の片付けに余念がない。ルームメイトのシャーロットはまだ着いていないようだ。
突然ドアが開き、「お手伝い係り」の若者がドヤドヤと入ってきた。「シャーロット姫」のご到着らしい。若者達によって、次々と彼女の荷物が運び込まれる。僕はその多さに驚いた。スミレの倍以上。彼女の両親は一トントラックでも借りたのだろうか。
間もなく、シャーロットと彼女の母、姉、姉のボーイフレンドが登場。シャーロットはヨークシャーから来た金髪の華奢な娘。父親が見えないのは、僕と同じように車を停めに行っているからだろう。
彼等に挨拶をする。僕は部屋の片方の隅から、シャーロットに荷物が次々と開けられ、片付けられるのを見ていた。次々と吊るされる服を見ていると、シャーロットはフォーマル・ドレスだけでも最低五着は持って来ているのが分かる。
「この娘、大学に何しに来とうとよ。」
と、何故か博多弁で感心してしまう。現れたお父さんに僕は聞いた。
「トラックで来られたんですか。」
父親は、「姉のボーイフレンド」という若者を指して言った。
「私の車と彼の車の二台で来たんですよ。」
なるほど。
荷物の片付けに忙しいシャーロット一家にひとまず別れを告げ、「レジスター」のために、ホールへ行く。僕にはよく分からないが、そこで、色々と登録をしたり、金を払ったりするらしい。それら全てを学生がやっている。
スミレがガウンを買っている。ガウンは中古と新品があるらしい。「ハリー・ポッター」のように四六時中ガウンを着て歩いているわけではないらしいが、このガウンは大学での必需品で、フォーマルな食事は行事には必ず着用するものらしい。スミレは中古に合うサイズがなくて、五十ポンド払って、新品を購入していた。
別のホールに軽食が用意されているとのこと。そこへ行く。テーブルの上にサンドイッチやコーヒー、果物が並べられており、ホールでは新入生や親達が談笑していた。僕達もサンドイッチの皿を片手に、その輪の中のひとつに加わった。
隣はチェスターから来た男の子と母親だった。彼は「物理学と数学」を専攻すると言った。そのうち、昨日学寮内を案内してくれたステッフも顔を出す。
そのうち、背広を着た中年の男性が話の輪に加わった。彼は「プリンシパル」と自己紹介、つまりこのカレッジの校長先生なのだ。
「どこから来られたの。」
「ロンドンから。」
など、当たり障りのない会話を校長先生と交わす。なかなか気さくな方だった。
ガウンを試着するスミレ。結構これを着る機会が多いらしい。