久々の休暇
僕たちが住んだ、ポート・ガヴァーンの村。左側の道を上がった向こう側に、魚市場のあるポート・アイザックの町がある。
実に久しぶりの旅行記である。
「そう言えば、最近、全然旅行してないもんな。」
昨年の夏と秋、息子の結婚披露宴で、中国と日本に行き、各々に対し、かなり長い旅行記を書いた。その旅行と、相手側のご家族の接待で、金を使い果たした僕は、しばらくどこへも行かないで、大人しくしていようと決めた。今年に入り、ボチボチ次の旅行を考え始めたときに、コロナ禍が始まった。四カ月の長くて厳しい「ロックダウン」の後、七月頃に、英国におけるコロナ感染者、死者とも落ち着き始め、少しずつ移動の制限が解除された。最初、
「秋口には一度日本に帰ろうかな。」
とも考えた。しかし、日本に到着した際の、二週間の検疫、隔離は、ずっと適用されたまま。三週間日本に帰っても、一週間しか行動できない。高齢の母の家に滞在するのも気が引ける。日本行きは諦めた。そんな時、
「秋に家族で休暇を取ろうよ。」
と末娘のスミレから声が掛かった。残りの三人も賛成。公務員で、一番休みを取りにくいスミレの予定を優先し、九月の最終週、四人でホリデーに行くことになった。行先は、最初、ギリシアを予定していた。
「天気の良い、海の近くで、ノンビリしたいよね。」
と言うのが全員の意見。しかし、八月に入り、ヨーロッパ各国のコロナ感染者は再び増加を始める。スペイン、フランスからの入国者に対し、強制的に帰国後二週間の検疫、隔離が義務付けられることになった。その後、ポルトガル、クロアチア等が追加になり、帰国後、検疫なしで渡航できる国がどんどん減っていく。そして、九月の初め、ギリシアもその中に加わった。
国外は諦め、国内に行き先を求める。しかし、海の近くという希望は捨てがたく、イングランドの西南に伸びる半島、コーンウォールが行先に決まった。僕だけは、二十年前、息子がまだ小学生の頃に、彼とふたりでコーンウォールを訪れたことがあった。海岸と、海の美しさを今でも覚えている。妻と娘たちは初めてである。女性陣がリサーチをし、北コーンウォールのポート・ガヴァーンという村の貸別荘で、一週間過ごすことになった。
九月二十七日、日曜日の朝六時、僕と妻とミドリは、車でハートフォードシャーを出発。ロンドンでスミレを拾って、西に向かって走り出す。九月になって学校が始まった頃から、英国のコロナ感染者は急増をしていた。僕たちが出発した前の週は、英国の人口の約四分の一が再びロックダウン下という状態。幸い、僕らが向かうイングランド西南部は、それほど感染が広がっていないという。公共交通機関を使わず自分で運転、一軒家に住み自炊して、昼間は滅多に誰とも出会わない海岸をトレッキング。これぞ「究極のコロナ・フリー・ホリデー」!
天気が良いと、海はまだ夏の色。エーゲ海の色と比べても遜色がないよね。