これぞホリデー

 

ギリシアの港には必ずある、ベネチア共和国時代の大砲。

 

昨日一日中太陽の下にいたので、朝起きると何となく身体が疲れている。炎天下にいることはそれだけで、結構体力を消耗するものなんだ。娘たちも同じらしく、今日はホテルでノンビリするという。僕にとってもありがたい。

「ホンマ、うちの家族と一緒にいると、常に動きまわるんで、疲れるんだよな。」

たまには「これぞホリデー」という怠惰な生活を送ってみたい。しかし、ゴロゴロしていても、何となく落ち着かない。貧乏性。それで、昼前に妻と二人で、車で十五分ほどのカシオピという町に出掛けることにした。

カシオピは、コルフ島北部の中心地。

「ギリシアの、典型的な観光地を具現化してみたら、こうなる。」

そんな場所である。車を停めて港に出る。

「何となく、デ・ジャ・ヴー。」

何度か来たのではないかという錯覚に陥る。クレタ島のハニアや、昨年行ったイタカ島によく似ている。港があり、その湾を取り囲むように、レストランやカフェが並んでいる。港には、ベネチア共和国支配の時代に使われた大砲が並んでいる。それもそっくり。しかし、記憶をたどってみると、僕は二十年前、息子と末娘とコルフに来た時、この町を訪れていた。心の中のどこかで覚えていたのかな。

 町から十分ほど歩くと、白い石で出来た小さなビーチがあった。今日は泳がず、日陰で昼寝をすることにする。アルバニアとの海峡を、大きなフェリーが通り過ぎていく。空はあくまで青く、水はあくまで澄んでいて翡翠色。今日もアルバニアの山々の上には、今日も入道雲が見える。妻は泳ぎに行った。僕はいつしか海岸の木の下で眠っていた。

 午後遅くにホテルに帰ると、娘たちは眠っていた。彼らは僕たちの隣の二人部屋に住んでいる。夕方になってプールで泳ぎスッキリした後で、またまた、プールサイドでビールを飲みながらポーカー。夕食の後、九時半ごろには布団に入って、そのまま眠ってしまった。

「しかし、このホテルにいると、全然金を使わんなあ。」

財布からクレジットカードを出したのは、到着の日、レンタカーを借りたときが最後。普段の休暇だと、最低酒を買うのに金を払うのだが、今回はそれもないので、全く財布を開ける必要がないのである。「安上がり」とは言えない。それに相当する金を最初に払っているのだから。しかし、「XX円ポッキリ」というのは、何となく安心する。日本で客引きに、「XX円ポッキリ」と言われたら、先ず警戒しないといけないが。

翌日、朝七時に目がさめたので、ホテルの周囲を少し散歩してみる。英国とは二時間の時差があるので、英国ではまだ五時である。朝はなかなか起きられない。妻はまだ眠っている。「秘密の海岸」まで歩いてみる。夕方とは太陽の方向が違うので、同じ景色がまた違った風に見える。橋の下を見ると、沢山の魚が泳いでいた。

 

アルバニアとの海峡を大きなフェリーが通り抜ける。

 

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