最後の晩御飯
最後の晩御飯はタイ料理になった。トムヤムクンにマンゴーサラダ。燕京ビールも。
「晩御飯、何を食べようか。」
僕と、妻と、娘たちは意見を出し合った。場所は、ホテルと同じ建物ある食堂街である。両側には本格的な中華料理、カジュアルな中華料理、タイ料理、日本のラーメン屋まである。
「中華料理以外がいいわ。」
とスミレ。それに残りの三人も賛同した。これで六日間連続、中華料理を食べたことになる。どれも美味しかったし、どれも少しずつ違っていた。しかし、さすがに六日間続くと、七日目には別の物が食べたくなった。結局僕たちはタイ料理の店に入った。そして、トムヤムクンなどを食べながら、
「たまには違うのもいいね。」
と言い合った。いくら美味しいものでも、毎日食べると飽きるというお話。
娘たちはまだ若いので、きっとまた中国に来る機会があるだろう。僕と、妻は、これが本当に、中国最後の夜になるかも知れない。そう思うと、感慨深い。
タイ料理店で、僕は「ヤンジンビール」(燕京啤酒)を注文した。北京では、このビールの他に「チンダオビール」(青島啤酒)が有名で、僕は最初よく「チンダオ」を注文していた。ちょっとあっさりしすぎていて水みたい。「ヤンジン」の方が、コクがあって美味いと思った。それからは、ずっと「ヤンジン」。その他に、披露宴で「ハルビンビール」(哈爾浜啤酒)を飲んだが、ソフトな口当たりだった。
今回、中国に来て印象深かったのは、何度も書いたが料理、そして若い女性である。中国の女性は肌がきれいだと思う。そして、スタイルがいい。夏なので、軽い格好をしておられるのだが、惜しげもなく、足を出している。スカートも短め。ショートパンツの人も多い。
「足に自信のある人は、足を見せる。」
自分の魅力を最大にアピールするが中国風なのだろうか。中年のスケベなおじさんには、「目の正月」が出来る場所なのだ。
「だから、あなたキョロキョロして疲れちゃうのよ。」
と妻。当たっている。
中国にいて。最後まで慣れなかった習慣は、エレベーターにしろ、地下鉄にしろ、降りる人が全て降りる前に、ガンガン乗り込んで来ることである。泊まったふたつのホテルは、中国では高級ホテル、客層もそれなりの人たちだったと思う。しかし、エレベーターでは、「降りる人が先」という欧米式、日本式のルールはなかった。地下鉄では、乗る方も、降りる方も「喧嘩腰」って感じ。それと、北京も街の中の道路は、一日中渋滞していた。人が多すぎる!
まあ、中国の人々が近代化に取り組み、まず、入れ物を作り、今、それに合う中身を充実させていこうとしている努力は、あちこちにうかがえた。
昔は自転車の洪水だったようだが、今はバイクの方が多い、北京の街。赤信号もなんのその。