到着!

 

ロンドンから16時間の飛行機の旅の後、双方の家族が会場のピングウに集合。

 

「こら困った、英語が通じひん。」

一足先にピングウ(平谷)にあるホテル「中信金陵酒店」に着いて、フロントに立った僕と娘のミドリは途方に暮れた。

「四つ星ホテルのフロントなんやろ。英語くらい喋ってえな。」

「お二人様ですか?」

と聞かれているのは、僕の乏しい中国語でも何とか理解できる。

「僕たちは四人グループで、二人が後で来ます。」

それを説明するだけの中国語が、僕には喋れないのである。まあ、それでも以心伝心、

「何となく、そうなんじゃない。」

という雰囲気で、キーカードを二枚貰う。とりあえず、妻と末娘のスミレが来るまで、ホテルのロビーで待つことにする。

その日、水曜日の午後にロンドンを発った僕たち家族四人は、コペンハーゲン経由で、昼前に北京空港に着いた。息子の結婚式に出席するためである。空港から二台のタクシーに分乗し、僕とミドリが先に着いたというわけだ。空港を出たタクシーは高速道路を三十分くらい走り、そこから山へ向かってもう三十分。山の中に入り、こんなところにホテルがあるのかなと心配になってきた頃に、目指す「中信金陵酒店」が現れた。土曜日に結婚式が行われるホテルなのだ。

タクシーに乗ってから、僕は結構緊張していた。

「北京のタクシーは、旅行者にはボルよ。」

「メーターを倒さないで走って、高い金額をふっかける運転手が多いから、注意してね。」

と北京を訪れたことがある人から聞かされていた。一応、僕の乗ったタクシーの運転手は、メーターをスタートしたし、請求された金額も、メーターに表示された金額と高速料金だけだった。何となく、最初の関門を突破したような気になっていたときに現れた新たな関門が、「英語の話せないフロント」だったのである。

「モトさんですか?」

英語で声を掛けられる。振り向くと、新婦の父、ハンさんが立っていた。会うのは始めてだが、写真で見たことがあったので、すぐ分かった。新郎の父と新婦の父の対面である。

「ニーハオ、韓先生。」

と握手をする。彼は、携帯の写真を僕とミドリに見せた。半日前、ヒースロー空港を発つ前にスミレが撮った写真だ。携帯で撮って、お兄ちゃんに送ったのが、ハンさんにも届いていたわけ。その写真の中の僕たちと、現在、ホテルのロビーでウロウロしていた僕たちは同じ服を着ている。確かに、初対面でも見つけやすいはずだ。

 間もなく奥さんのエレンさんも現れ、妻とスミレの乗ったタクシーも到着。新郎新婦の家族が勢ぞろい。新郎新婦は夕方五時ごろに到着することになっている。

 

ホテルは山の中の湖の畔、斜面に建てられている。北京に住む人々が自然に触れに来る場所らしい。

 

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