ふたつの発表会
ナイトクラブのステージで踊るラインダンスクラスのメンバー。
土曜日の夜、ふたつの「発表会」があった。ひとつは、「合唱団」、もうひとつは「ラインダンス」である。ラインダンスと言っても、宝塚歌劇のフィナーレみたいなものではなく、「音楽に乗って、皆が同じ振り付けで踊るダンス」くらいの意味付けで良いと思う。
通常、「社交ダンスクラス」の二回目のレッスンは午後二時から三時まである。その後、乗客たちが同じフロアに集まり、ピアノバーのピアニスト、ジョンの伴奏で合唱の練習をしているのは知っていた。そのお披露目が、午後八時半からアトリウムで行われたのだ。
女性はアトリウムの階段に立ち、男性はテラスに並んでの合唱。曲目はビートルズの「レット・イット・ビー」とか、スティーヴィー・ワンダーの「セイリング」とか、トム・ジョーンズの「デライラ」とか。僕達やその上の年代でも知っている曲ばかり。短期間の練習のわりには上手だった。暖かくて盛大な拍手が合唱団に送られる。
もうひとつの「ラインダンス」発表会は、ナイトクラブのひとつで、女性歌手の舞台の中休みを利用して行われた。夜の十時半からで、僕は夕食の後、一度部屋に戻り、ひと眠りしてから、そのナイトクラブに行った。マユミはずっとこのラインダンスのクラスに通っている。僕も三回ほどトライしたが、比較的緩やかな社交ダンスと違い、早い動きが要求されるので難しい。それで止めてしまった。インストラクターはローレーンというポニーテールのお姉さん。
「ライト・レフト・ライト・レフト、キック、キック、キック、ターン!」
元気な人である。七十歳以上の女性が、いとも簡単にその動きをこなしてしまうのには恐れ入る。
十時半からのステージ。二十人余りの「ダンサー」が参加したが、三人を除いて全員が女性。奥さんが踊っているのを、旦那がカメラで撮るという「運動会パターン」が多い。マユミも楽しそうに踊っている。僕も、練習した一曲だけ参加させてもらう。これが結構ハード。一曲終わると息が切れる。しかし、合唱にしろ、ラインダンスにしろ、こうして発表の場、つまり目標が与えられるのは、参加者の励みになって良いと思う。
日曜日の朝、海全体がワイン色に染まる壮絶な朝焼けの後、雲が広がり、一段と蒸し暑くなってきた。スコールが近付いているのだと思う。エレベーターの中で会った女性に、
「昨日、合唱団で歌っておられたでしょ。見ましたよ。ウェル・ダン!」
と褒めてあげると、
「あなたの奥さんは、ラインダンスに出ておられたでしょ。ウェル・ダン!」
と切り返されてしまった。
日曜日は、午前中礼拝があるという。一体どの宗派でやるんだろう。数日前、夕方バーでマユミとビールを飲んでいると、花嫁と花婿の格好をしたカップルが目の前を通り過ぎていった。
「ええ、結婚式までやってしまうの!?何でもありの船やなあ。」
インストラクターのローレーン、いつも元気な人である。となりのおばあちゃんとの年齢差は?