ビリーをめぐる人々

 

ビリーの才能を見抜き、指導を続けるウィルキンソン夫人。熱心だが、どこかなげやりな人。

 

音楽はエルトン・ジョンである。このゲイのおじさん、エリザベス女王から「サー」の称号を贈られているので、「サー・エルトン」と正式には呼ぶらしいが、結構ミュージカルの作曲も手掛けている。同じくロンドンでロングランを続ける「ライオン・キング」も彼の作曲である。「サウンド・オブ・ミュージック」にしろ、「レ・ミゼラブル」にしろ、「マンマ・ミーア」にしろ、舞台でのミュージカルがヒットしてから映画化された。しかし、「ビリー・エリオット」は二〇〇三年に、まず映画として作られ、その後舞台化されている。最初の映画はミュージカルではなかったので、舞台化に際して、エルトン・ジョンが音楽を書いたわけだ。

さてストーリー。先ほどから何度も書いたように、舞台は一九八四年、イングランド北部のカウンティー・ダーラムである。主人公は十一歳のビリー・エリオット。数年前に母親を亡くしていた。ビリーの父や兄は炭鉱の閉鎖に抵抗するストライキに入っていた。ビリーは町の公民館でボクシングのトレーニングを受けていた。父親に言われて嫌々である。ある日、ボクシングのトレーナーから、次に行われるバレーのレッスンの先生に、公民館の鍵を渡すように言われる。ビリーはバレーのレッスンをするウィルキンソン夫人に鍵を渡した後、女の子たちのレッスンを見る。そして、バレーの魅力に取り付かれる。

ビリーは父親にはボクシングに行っていると言って、秘かにバレーのレッスンに通う。ウィルキンソン夫人は彼の才能を見抜き、ロンドンにある「ロイヤル・バレー・スクール」に彼を入れようとする。しばらくして、ビリーがバレーをやっていることが父親にバレる。父親はビリーにバレーのレッスンを受けることを禁止する。ウィルキンソン夫人はビリーに無料でバレーを教え、彼を「ロイヤル・バレー・スクール」のオーディションに連れて行こうとする。

こう書くと、このウィルキンソン夫人、情熱的な、愛情に溢れた中年女性のように思えるかも知れないが、くわえ煙草でレッスンをする、ちょっと投げやりな感じのする女性である。日本で二〇〇六年に「フラガール」という映画が作られ人気を博した。福島県、炭鉱が閉鎖になった後(奇しくも、「ビリー・エリオット」と同じ状況である)その町に娯楽施設を作り、そこにフラダンスのチームを組織するというストーリー。その中に、松雪泰子の演じる、酒浸りのダンス教師が登場する。

「似ている、そっくり!」

ウィルキンソン夫人を見て、フラガール」の松雪泰子を思い出した。

オーディションの当日、ウィルキンソン夫人が朝、ビリーを迎えに行くことになっていた。しかし、その朝、ストライキ中の労働者と警官隊の大規模な衝突が起こり、その中でビリーの兄を含め、大量の負傷者が出る。その混乱のため、ビリーは外に出られない。ウィルキンソン夫人はビリーが待ち合わせの場所に来ないので、彼の家に行き、連れ出そうとする。そこで、夫人が家族に内緒で、ビリーにオーディションを受けさそうとしていることが父親にばれてしまう。ビリーは今後一切バレーをすることを父親から禁じられる。

数ヵ月後、炭鉱労働者のクリスマス・パーティーがあった。参加者が帰った後のホール。そこでビリーはカセットレコーダーを見つけ、その音楽をかける。そして、その音楽に合わせてバレーを始める。ビリーを迎えに来た父親はそれを見て感動し、ビリーにバレーをすることを許す。

 

最後はビリーの情熱に負け、ロンドンのオーディションに付き合うお父さん。メチャ方言がきつい。

 

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