フィヨルド観光その一、フロム鉄道
雪山に囲まれたミルダル駅で、ノルウェー国鉄(左)からフロム鉄道(右)に乗り換える。
フィヨルド観光「ナッツシェル(凝縮)」コースの旅程は以下のようなものだ。
ベルゲン>ミルダル(電車)
ミルダル>フロム(電車)
フロム>グドヴァンゲン(船)
グドヴァンゲン>ヴォス(バス)
ヴォス>ベルゲン(電車)
朝の九時前にベルゲンを出発して、戻るのは午後七時である。
八時四十三分、ベルゲン駅を、いかつい顔のノルウェー国鉄の電車で出発する。出発と同時に、長いトンネル。
「わあ良い景色!」
外を見たり、写真を撮ろうとすると、次の瞬間にはトンネルに入ってしまう。頻繁にトンネルがあるというより、トンネルの合間に、駅に停まるためにちょっとだけ地上に出るという感じ。トンネルを抜けた際に垣間見える、フィヨルドと雪をいただいた山の景色を楽しむ。一時間ほどでヴォスという湖の畔にある駅に停車。そこから電車は登り勾配にかかる。最初山の頂上付近に見えた雪が、標高が上がるにつれ徐々に近づいてきて、遂には、電車は雪原の中を走る。二時間ほどで雪山に囲まれたミルダルの駅に到着。ここの標高は八百六十六メートル。ノルウェーで一番高い場所にある駅だという。
ここで乗り換え。この先は「フロム鉄道」という鉄道である。反対側のホームに停まっている、濃い緑色の列車に乗る。車両の感じが、日本で今はなきブルートレインに似ている。僅か数分の乗り換え時間。フロム鉄道の車両は座席予約の客で満員、座るところがない。この先、標高ゼロメートルのフロムまで、二十キロで八百メートル下るという、ケーブルカーも顔負けの急勾配である。この鉄道、オスロとソグネ・フィヨルドを結ぶ線として、一九二四年に建設が開始され、難工事の末に十六年後の一九四〇年に完成したという。実際乗ってみると橋とトンネルの連続で、
「なるほど、これじゃあ作るのは大変だったろう。」
と、納得する。途中十箇所ほどの駅に停まるが、その駅には標高が書いてあり、それがどんどん下がっていくのが分かる。圧巻は「滝」の駅である。プラットフォームがステージのようになっていて、そこからものものすごい水量の滝が眺められる。ここには五分ほど停車するので、乗客は降りて、ゆっくり滝を見学できるようになっている。滝からの容赦なく水しぶきが飛んでくるので、カメラを濡らさないようにするのに苦労する。
「滝」の駅を出る時、車掌さんが、
「前の車両にいくつか空いている席があるから、そこへ移動されたらどうですか。」
と勧めてくれる。確かに、バラバラではあるが、僕たち三人が座れる席はあった。僕の座ったのは中国人の団体さんの真ん中。うるさいのなんのって。中国人は誰も声が大きい。
「中国人は、どうして、あんなでかい声で話すのだろう。」
「中国語はささやくように話すと意味が通じない。」
と北京に留学経験があり、北京語を話せる息子が言っていたのを思い出す。
プラットフォームに立つと滝が圧倒的な迫力で迫って来る。