ブリッゲン
米国のミネソタから来たおじさんに撮ってもらった写真。全世界からの観光客の集まるブリッゲン。
観光案内所の対岸にある「ブリッゲン」に向かう。三角屋根でカラフルな木造の家が、海に面して立ち並ぶキュートな街並み。ユネスコの世界遺産に登録されている。ハンザ同盟時代の建物であるという。「ハンザ同盟」とは、北ドイツやバルト海沿岸の有力な都市が、貿易を独占するために十二世紀に結成したものであるが、独文科出身の僕には気になる言葉。
「『ハンザ』という言葉はドイツ語で『同盟』と言う意味なので、『ハンザ同盟』と言うのは『同盟同盟』ということになるんだけど。ま、いいか。」
ブリッゲンは「日本のツアーガイドが語るおすすめ観光スポット」でも一番に挙がっている。
「ここはベルゲンの街の必見の場所だね。京都で言えば金閣寺、ロンドンで言えばバッキンガム宮殿、金沢で言えば尾山神社。」
と僕が言うと、
「それを言うなら兼六園でしょ。」
と金沢出身の妻が訂正してくる。
ベルゲンについてから、空は結構厚い雲で覆われ、時々小雨もパラついていたが、日頃の行いの良い妻の予報通り、夕方になって雲が切れ、陽光が漏れ始めた。夕日が、ブリッゲンの家々の正面に当たり美しい。いや、夕日というのは正しくない。今は午後六時。日没は五時間以上後の午後十一時過ぎなのである。まだまだ夕方とは言い難い。
ブリッゲンを通り過ぎ、岬の先端にある、王の館に行く。北の国らしく、灰色の石で組まれた重厚な建物である。少し高い位置にあり、ベルゲン湾、「ヴォーゲン」が一望できる。先ほど見た白い大きな帆船が、目の前を横切り、湾の外へ滑るように出て行く。岬の突端には、軍服を着て何故か双眼鏡を持った国王「ハーラル五世」の銅像が立っている。ノルウェーは王国なのである。
ノルウェーと言うと、地理的にもヨーロッパの端にあり、何となく辺境地帯という印象を受ける。日本人に言わせると、
「サバの他に何か売るものがあるの。」
という感じ。日本のスーパーマーケットでよく「ノルウェー産のサバ」というのを見かける。ところが、どうしてどうして。ノルウェーはヨーロッパでは最も豊かな国なのである。何と、原油の輸出量では、世界で六番目なのだ。(一番はもちろんサウジアラビア)ノルウェーは「EU(欧州連合)」にも入っていない。
「そんなものに入らなくても、おいらは自分で生きていけますよ〜。」
と言うくらいお金持ちなのである。
ノルウェーはかつて、漁業と林業くらいしか取り柄のない、比較的貧しい国であった。それを根本的に変えたのが、一九七〇年代に、ノルウェーの沖合で発見された北海油田である。石油の輸出によって国の経済は一変した。ノルウェーの小説を読んでいると、社会の急激な変化に伴う「伝統やモラルの喪失」というテーマがよく出て来る。
王の館の先端、湾を見下ろす場所。中央に双眼鏡を持った国王の銅像がある。