昔の人々の暮らしぶりを知る方法

 

農村を描いたブリューゲルの絵。親子で有名でこれはお父さんの作品。

 

トラムに乗ると、十分もしないで、セント・ピータース・駅着いた。ゲントの町はあちこちが工事中なのが少し残念だった。駅のスクリーンに出ている発車案内が、貼ってある時刻表と全然違う。また、ベルギーの駅ではどこもそうだが、駅でアナウンスが一切ない。そもそも、駅にスピーカーがないんじゃない?車掌さんに聞いて、ブリュッセル方面の列車に乗るが、何処に停まって、何時にブリュッセルに着くのかは全然分からない。

ゲントまでは「ウィークエンド・チケット」というのを買っていて、わずか十ユーロで往復できる。いずれにせよ急がぬ旅、列車の中で、朝作ってきたサンドイッチを食べ、アパルトマンの冷蔵庫から持ってきたミネラルウォーターを飲む。その列車は各駅停車で、一時間余りかかって、ブリュッセルに着いた。

ブリュッセル・セントラルで列車を降りる。訳すると「中央駅」だが、ブリュッセルの表玄関は「ミディ、南駅」。セントラルは、観光名所の「グラン・プラス」のすぐ横にある、地下の小さな駅である。日本では、鹿児島駅が小さくて、西鹿児島駅が主要駅というのがあった。JR九州はその後、気が引けたのか、西鹿児島駅を新幹線開通の際「鹿児島中央駅」に改名したけど。ともかく、セントラル駅から坂を上がって、ブリュッセル王立美術館へ行く。ここは四つのコーナーから出来ている。「オールドマスター(昔の名匠の絵)」、「近代美術」、「現代美術」、「ルネ・マグリット」である。どれかひとつだけに入場してもいい。また、「コンビチケット(組合せ切符)」を買えば、全てに入れる。僕はコンビ切符を買った。

「でも、三時間で、四つの展覧会を見たら疲れるだろうな。」

そう思いながら。

先ずは「オールドマスター」のコーナーを見る。ルーベンス、ファン・ダイク等、フランドル派の巨匠の作品も素晴らしいが、ここのコーナーの呼び物は、何と言ってもペーター・ブリューゲルである。彼は、当時の庶民の生活を描いている。

「五百年前、十五世紀の人はどんな生活をしていたんだろう。」

そんな疑問が湧いたときは、美術館へ行って十五世紀に描かれた絵を見るのが一番。絵の中には当時の街並み、人々の生活が保存されている。しかし、画家と言えども、食っていかねばならない。注文を貰って、金を貰って描くわけである。スポンサーは金持ちか、教会が多いので、当然のことながら、題材は金持ちの家族の肖像画や、宗教画が多くなる。そんな中で、ブリューゲルの描く庶民の生活は異彩を放っている。村の様子を描いた絵の中で、村人たちが何をしているのか、ひとりずつ追っていくのはとても面白い。遊んでいる子供たち、凍った湖の上でスケートをいる人たち、豚を屠っている人、街角に立ってだべっている親父さんたち、台所で働くおかみさんたち・・・

 初めてウィーンの美術史博物館でブリューゲルの絵を見たとき、ちょっと衝撃だった。それ以来、彼は僕のお気に入りの画家のひとりだ。

 

見るものを不思議な世界へ誘うマグリットの作品。

 

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