ネロ少年の見たかった絵

 

白い壁が清潔感を漂わせる大聖堂の中。

 

ルーベンスハウスは、街の中にある家としては破格の大きさだと思います。

「写真を撮るのが難しいなあ。」

庭は良く整備され、花が咲いていて結構きれいなのですが、周囲に近代的な高い建物が立っているので、写真を撮ろうとすると周りの建物が入ってしまうのです。それが少し残念です。家の中に入りました。そこも、個人の家としてはかなりの大きさです。当時、ルーベンスが、大変裕福であったことが偲ばれます。

「あれ、この雰囲気、どっかで見たことあるで。」

私は考えました。そして、ストラトフォード・アポン・エイヴォンのシェークスピアの生家を思い出していました。木でできた、素朴なインテリアがよく似ています。

ルーベンスハウスには、ルーベンスのものも含めて、当時の画家の絵が展示してありました。絵には小さな番号が付けられているだけです。入り口で渡された小冊子に絵のタイトルや年代、説明が番号順に書いてあって、番号で照合しながら絵を見て廻るという仕掛けです。説明の札が邪魔にならなくて良いアイデアだと思いました。先ほども書きましたが、ルーベンスは、英国のナショナル・ギャラリーにあるような、三メートル掛ける五メートルなんていう大きな絵を沢山描いていますが、ここに展示されているのはどれも小ぶりの絵でした。

ルーベンスハウスを出て、もう一軒の「マイヤー・ファン・デン・ベルク美術館」に行きました。そこも、美術館として建てられたものではなく、普通の家を改造したもの、したがって、間口は狭くて、背の高い建物でした。アントワープが裕福な都市だったことは先ほども書きましたが、ここにある美術品は、貴族であるフリッツ・マイヤー・ファン・デン・ベルクの「個人的なコレクション」だったそうです。

「どんだけ金持っとったんや、そのおっさん。」

と感心してしまいます。私の好きなペーター・ブリューゲルの絵を見ることができたのは収穫でした。

そこから大聖堂へ向かいます。

「大聖堂へ行くのは楽ちんやもんね。」

オールドタウンの道は結構入り組んでいるのですが、大聖堂への道は絶対に間違えることはありません。「アントワープ聖母大聖堂」は、高さが百二十三メートルとのこと、周りに近代的なビルが建っても、まだそれを凌駕して聳え立っています。

「アントワープ聖母大聖堂」は、白い壁が清潔な印象を醸しだす教会でした。ステンドグラスの美しさは、これまで見た教会の中で、一、二を争うものだったと思います。この大聖堂の中には何枚からのルーベンスの絵があります。「フランダースの犬」のネロ少年はそれを見ることを夢見ていました。クリスマスの朝、その絵に見守られるようして、亡くなるのでした。グスン。教会の祭壇には、季節の花が飾ってあり、フラワーアレンジメントの女性が、花を活けていました。

 

ステンドグラスの美しさはヨーロッパでもトップクラスの教会だと思います。