バーベキュー
孫が昼寝の間に、お祖父ちゃん二人が素敵なレゴのお家を作った。サプライズ。
「夕方バーベキューするから、パパとママはサラダを作って。」
と日曜日の昼、コンドに着いたとき、ワタルが言った。それで、僕はマカロニサラダ、妻は野菜サラダを作ることにした。ハンさん夫妻、エンゾーの分も入れると、食事はいつも九人分作らないといけないので、結構お手間。しかし、妻も僕も、「自分の料理を他人に食べてもらう」ことが趣味なので、苦にはならない。お手伝いさんのシャシャも、洗い物などを手伝ってくれるし。
「他人に料理を食べさせるのが趣味、これ、お母さん譲りね。」
と妻が言う。今年、九十二歳になる母は、今でも、皆があっというような料理を作り、それを振舞うのを楽しみにしている。今でも、京都の実家を訪れると、毎日凝った食事を作ってくれる。
四時頃にハンさん夫妻も来られた。(本当に、彼らには毎日会っている。)ワタルはプールサイドでのバーベキューの準備のために、降りて行った。ゾーイ、エレンさん、シャシャが、必要な食器や飲み物を運んでいる。
サラダが出来たので、それを持って、僕たちもプールサイドに降りる。スミレとハンさんが、プールでエンゾーの相手をしている。息子はエンゾーがほんの数か月のときから、プールに連れて行っていた。その甲斐あって、彼は水を怖れない。ボチャンと飛び込んでは、水中をバシャバシャ泳ぎ回り、最後には岸にたどり着く。そんなエンゾーを見ていて、
「息継ぎを教えれば、どこまでも泳げるようになるな。」
と僕は思う。僕も、三人の子供たちを、赤ん坊のころからブールへ連れて行った。その甲斐あって、皆泳ぎが達者。ワタルは高校、大学と水球部の選手だった。亡くなったミドリは、死の直前まで毎日千五百メートル泳いでいた。
プールサイドに居ると、鳥の声が聞こえてくる。しかし、熱帯の鳥の声というのは、日本やヨーロッパとはかなり違う。エレンさんが、
「あれ、見て!」
と言う。プールサイドの気の上に、大きな白いくちばしをした大型の鳥が止まっている。見たことのない鳥。後で調べたら、「キタカササギサイチョウ」という名前らしい。消防車のサイレンのような声で鳴きながら飛び去った。
備長炭になかなか火が点かなくてワタルは苦労している。最後にはやっと火が安定し、色々な肉が乗せられ、いい匂いがしてきた。
「ご飯できたよ!」
皆プールから上がってきて、夕食が始まる。シャンペンとワインが抜かれ、海老や野菜も次々と火の上に置かれていく。六時を過ぎ、辺りは少しずつ暗くなりはじめてきた。プールの水面が、周囲の建物明かりを映して揺れている。
プールサイドでバーベキュー。シンガポールの定番。