七つの滝巡り

 

懐かしいスーパーカブが停まっている民家。庭には二羽鶏がいた。

 

ランカウイ島滞在二日目の朝、レンタカーが届いた。これで、島の中を回ってみることにする。今日の目的地は「滝」。山がちで、降水量の多いこの島では滝が多く、七つの滝巡りができるスポットがあると言う。

 昼前に、妻の運転でホテルを出る。途中、幾つかの村を通り過ぎる。トタン屋根の平屋の家。家の庭では、鶏たちが走り回っている。ホンダのスーパーカブがたくさん走っている。あれって片手で運転できるので、片方にプロパンガスのボンベなど、荷物をぶら下げたままバイクに乗っている人もいる。もちろん、誰もヘルメットなんてかぶっていない。

 「七つの滝」の入り口に車を停め、「入山料」を払って歩き出す。入るとき、QRコードをスキャンして、出るとき、またスキャンする。ジャングルで道に迷って降りて来られない人がいても、夕方になればそれが誰か分かるという仕組み。

 最初は三十分くらい、ひたすら階段を上る。最初の滝が現れる。滝と言っても傾斜は緩やかで、急流というところ。そこからは、ジャングルの中の道となり、鬱蒼と繁った熱帯雨林の中の道を歩く。更に三十分ほど歩くと、「ブルー・プール」という場所に着いた。そこは三メートルくらいの小さな滝で、滝壺で泳げるようになっていた。水の色が、何となく青っぽくて、「ブルー・プール」という名前にもうなずける。ジャングルの中を歩いて、かなり暑かったので、滝壺に入ってみる。

「ああ、極楽、極楽。」

 全ての滝を巡るのには、まだそこから一時間半以上登らないといけないとのこと。戻ることにする。途中まで降りて、横道に入る。ドドーッという水の音が聞こえてくる。間もなく、高さ五十メートルくらいの滝が姿を現した。三段になっていて、結構な流量がある。日本なら、確実に「危険なので立入禁止」になっていると思うが、ここはマレーシアのジャングルの中。滝壺の中にも入って行けるし、二日前のエンゾーのように、修験者よろしく滝に打たれることもできる。また、滝を横の岩を登っていくこともできる。僕たちは、滝壺に入り、落ちてくる水に流されそうになりながら、岩の上で水を浴びていた。涼しくて気持ちが良い。

そのうち、子供を連れた、マレーシア人のお母さんがやってきて、滝壺のプールで泳ぎ出した。妻はその女性の恰好を見て驚いている。僕は前回マレーシアに来た時、何回か見て知っていた。それはイスラム教の女性の水着。スカーフを被り、長いマントのような服をスッポリ着て水に入る。「ブルカ」と「ビキニ」を合わせて、「ブルキニ」と呼ばれている。水の中では動きにくく、水の外ではずいぶん重そうな気がする。個人的には、

「そこまでして泳ぐか?」

という気もするが、まあ、暑い中。イスラム教の女性だって、水浴びをしたいにちがいない。

 マレーシアでは、地元の女性はほとんど、ヒジャブ(スカーフ)をしている。ホテルの従業員の女性も、皆「かぶりもの」をしていた。

 

これは気持ちがいいですよ。滝の上まで何となく登れそう。

 

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