自然に溶けこんだホテル

 

自然の中にひっそりたたずむホテル。しかし、設備は素晴らしかった。

 

 今回シンガポール滞在の予定は九泊十日。その真ん中に、三泊四日で、マレーシアのランカウイ島に行くことになっていた。ベタッとシンガポールにい続けて、息子とその家族にあまり負担をかけてもいけないし、途中、しばらく僕たち夫婦と娘だけで行動することにした。シンガポールに着いて三日目の朝、僕たち英国組は、チャンギー空港に向かう。今回は「ターミナル四」、近隣の目的地に行くためのターミナルらしく、聞いたことのない航空会社の小さな飛行機が並んでいた。僕たちは、十時半ごろに、「エア・アジア」の飛行機でランカウイへ向かう。

 今回、インドネシアのバリ島に行くか、マレーシアのランカウイ島に行くか、候補が二つあった。両方とも、息子夫婦が友人の結婚式で訪れて、良かったと言っていたから。結局、「静かそうだ」という理由で、ランカウイ島が選ばれた。飛行機は、一時間後、翡翠色の水をたたえた湾を横切り、ランカウイ空港に到着。タクシーでホテルに向かう。道の両側には昔タイで見たような、質素な平屋の家が点在していた。確かに静かな場所だった。

 三十分ほどで、今回三晩宿泊する、「タンジュング・リュー・リゾート」に到着。しっとりとした色調の建物、緑で覆われた、自然に溶けこんだホテルだった。中庭にある池には、蓮の花が咲いている。ピンク色の、何かの熱帯フルーツのジュースを飲んだ後、部屋に通される。

「でっけぇ〜!」

そこは、これまで泊ったホテルの中で、おそらく一番豪華な部屋だった。いわゆるスイートルームで、結構広いリビングルームと、キャッチボールの出来そうな寝室があった。その間に、またまた広い浴室があり、パーティションを開けると、三つの部屋が「いけいけ」になった。リビングと寝室には、畳一枚くらいの大きさのテレビがあった。

 少し休んだ後、裏の砂浜に出てみる。そこはホテルのプライベートビーチのようになっていた。広い砂浜には、ポツポツと人がいるだけ。

「人が少ないのはいいねえ。」

人口密度の高いシンガポールはちょっと息が詰まる。人の少ない、広々とした場所は、何となく心が落ち着いた。妻と砂浜を散歩してみる。所々、マングローブが生えていた。マングローブを見るのも、ソロモン諸島を訪れて以来のような気がする。沖には、ちょっと松島っぽい、木で覆われた島というか、岩が並んでいる。日本だったらおそらく「獅子岩」とか「象岩」とか「夫婦岩」とか名付けられるのだろう。

 夕方、妻とふたり、砂浜の椅子に座って、夕日を眺めながらビールを飲む。

「涼しいねえ。いい気持ち。」

気温は二十五度くらい。赤道直下、熱帯にいるというのが信じられない。二人で、刻々と色を変えていく空の雲を見ていた。

 

ホテルのテラスから眺める夕焼けが最高。

 

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