習近平はプーチンのお友達

 

エア・チャイナ、上海行のチェックイン。エコノミークラスは「经济舱」、直訳なのが笑える。

 

「習近平はプーチンのお友達なんや。」

僕はつぶやいた。ロンドン・ガトウィック空港で、僕は上海行のエア・チャイナ(中国国際航空)機に乗り組み、座席の前にあるモニターを見ていた。「マップ」というアイコンにタッチすると、これからこの飛行機が飛ぶ経路が表示される。それを見ると、英国から、ロシアの上を飛んで、真っすぐ上海に向かう経路が表示されている。それは僕にとって意外なものだった。ロシアのウクライナ侵攻と、それに伴うロシアに対する経済制裁の後、基本的にヨーロッパや日本の飛行機は、ロシアの上空を飛ぶことができなくなった。ヨーロッパとアジアの間を飛ぶ飛行機は、北極や中近東に迂回することになり、それまでより三時間ほど余分に掛かるようになった。また、その分値段もかなり高くなった。しかし、僕の乗ったエア・チャイナ機は、ロシアの上を最短距離で飛んでいく。

「中国は経済制裁に参加してへんからや!」

知ってはいたが、それを改めて感じた瞬間だった。

 機内では同行の妻とは少し離れた席。隣の席は空きで、その向こうに、若いアジア人のお兄ちゃんが座っている。中国の航空会社なので、おそらく中国人。

「目的地は上海ですか?それとも、上海からどこかほかの場所に行くんですか?」

と標準中国語で尋ねてみる。上海が彼の目的地だった。家に帰るという。彼は高校生で、英国の寄宿制の高校に行っていて、秋休みで一週間、上海の両親の家に戻る途中だとのこと。「秋休み」というのは、英国の学校で、秋学期のまん中にある一週間のお休み。僕も、まさに学校の「秋休み」を利用して、息子の住むシンガポールを訪れようとしているのだ。

「休みの度に、上海に帰るの?」

と聞くと、そうだと言う。

「お金持ちの『ボンボン』なんやな。」

と、ちょっと羨ましく思う。英国の寄宿制学校というのは、信じられないくらい高い。いくらエコノミークラスと言っても、飛行機の切符は十五万から二十万円はする。彼は一年に、おそらく五回から六回、故郷に帰っているようだ。中国の富裕層は、桁違いの金持ちだと聞いたが、本当のようだ。

 飛行機は朝五時に、上海浦東空港に到着。超高圧的な中国の入国審査と手荷物検査を受けた後、国際線の出発ターミナルに入る。シンガポール行きの便は一時間遅れており、僕と妻はここで五時間待つことになる。とにかく、メッチャ広い空港で、端から端まで歩いてみたが、十五分以上かかった。つまり、一キロくらいあるのだ。そして、愛想のないことこの上ない。だだっ広い建物の中にまばらな人。あるのは、中国政府のプロバガンダだけ。

「中華人民共和国成立七十五周年記念をみんなで熱烈に祝おう!」

なんてものばっかり。しかし、さすが「食の中国」。ラーメンは安くて、美味かった。

 

「熱烈慶祝中華人民共和国成立75周年」、このスペースを商業広告に使えば儲かるのにね。

 

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