一足早い初詣

 

大晦日、まだ人出の少ない北野天満宮で、静かにお参りができた。

 

 いよいよ色々あった二〇二四年も最後の日、大晦日。「マッチ売りの少女」がやって来る日。U子さんと、北野天満宮に「一足早い初詣」に行った。彼女の娘さんが、一月に、看護師の国家試験を受けられるので、「合格祈願」のお守りを買うというのが一つの目的。もう一つは天満宮の近く、千本今出川の漬物店「近為」で、お土産の「京漬物」を買うことであった。

 昼に北野天満宮の前で待ち合わせる。天満宮の鳥居の前には「初詣」という朱色の旗が立っており、参道には屋台が並んでいる。屋台は準備中で、まだ開いていなかった。明日になれば、すごい人出になるのだろうが、今日はまだ空いている。いつものように青空が広がり、太陽の下にいると結構暖かい。

「一日くらい早くても誤差範囲。神さんも堅いこと言わあらへんやろ。」

とお参りを済ませ、U子さんはお守りを買う。その後、「上七軒」の結構情緒のある街並みを抜け、千本通へ。「近為」で漬物を買い、U子さんは向かいの「五辻の昆布」でも、お土産の塩昆布を買っている。

「腹減ったし、何か食おうや。」

と言うことになるが、今日は大晦日。食堂、レストランの類は休業が多い。

「焼肉か串カツが食べたいなあ。」

とU子さんはおっしゃる。

「四条まで行けば店も開いてるやろ。」

ということで、バスで四条大宮まで行く。確かに焼肉や串カツの店はあったが、全て閉まっていた。

「きっと、焼肉、串カツ同業組合が、大晦日は休みましょうって決めたんや。」

と二人で言い合う。結局、四条烏丸まで行き、開いていたパブを見つけ、昼からビールを飲んだ。「フィッシュ・アンド・チップス」をつまみながら。(どうして京都でこれを食べるの?)Sちゃんと行った「立ち飲み」に続き、二度目の「昼飲み」。

 四条烏丸でU子さんと別れ、地下鉄で母の家に戻る。大晦日は僕の食事当番だったので、煮物、年越し蕎麦を作る。チズコ叔母が、超豪華版おせちを作って持ってきてくれた。母が近所のスーパーで注文した「祝い鯛」も届いている。それらは明日のお楽しみ。お餅も買ってある。

 七時のNHKニュースの後、「紅白歌合戦」が始まったが、見る気もない。テレビを消して、二階に上がる。ウィスキーを飲み、絵を描きながら大晦日の夜を過ごす。

「やっと今年も終わる。」

僕は、心からホッとして気分だった。

「二〇二四年は特別な年。死ぬまで忘れない。」

 

チズコ叔母が、三日かけて作った、豪華版のおせち。数えたら二十六種類の食材が入っていた。

 

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