グリーン車に乗った
やはり九十三歳の継母と昼食に。僕と同じ量をスッペリ食べる、元気な証拠。
十二月二十七日、池袋のホテルで目覚めた僕は、まず朝風呂に行き、それからゆっくりと朝食をとった。大浴場は、昨日の夜十時より混んでいる。
「これから一日が始まるんよ。ゆっくり風呂に浸かってる場合じゃないでしょ。」
と自分のことを棚に上げてつぶやく。九時半にホテルを出て、地下鉄丸ノ内線で東京駅へ。新幹線乗り場に向かう。
「な、なんや、この混雑は!」
僕は唖然とした。人、人、人。中国語で言うと「人山人海」。考えてみると、今日は金曜日、明日から年末年始休みが始まる。帰省する人、旅行する人、それにクリスマス休みで日本へ来た外国人観光客も加わって、駅はごったがえしていた。
「ガ〜ン!席がない。」
新幹線の切符は、どの電車に乗るか分からなかったので、買っていなかったのだ。京都までの指定席を買おうと思っても、夕方まで全列車が満席になっている。年末年始はほぼ全部の列車が全車指定席。京都まで帰るためには、自由席特急券を買って、デッキに立っているしかないのか。
「二時間立ってるのもタリ〜よな。」
仕方なく、僕は倍の料金を払ってグリーン車の切符を買った。グリーン車はまだ空席があったのだ。さて、切符を持って改札を通ろうとしたが、余りにも混んでいて、改札を通り抜けるのに十分以上かかった。ホームも大混雑。しかし、日本の鉄道の偉いところは、このような混雑の中でも、きっちり定時に列車を運行していること。
初めて新幹線のグリーン車に乗った僕。おしぼりと飲み物のサービスがあったが、その後眠ってしまう。
「しもた!富士山見るのん忘れた。」
昼過ぎに無事京都の実家に到着。母に旅で会った人たちについて話す。それにしても、沢山の人に会って、色々な話をしたものだ。
二十八日。今年もいよいよ残り少なくなってきた。そして、仕事がないって素晴らしい。この日の午後は、友人のY子さんと、京都御所の中、旧近衛邸の跡に出来たカフェでお茶を飲んで過ごす。さすがに、年末になり観光も一段落というところか、町を歩いていても、御所の中を歩いていても、観光客の姿は目に見えて少なくなった。新しいカフェは、御所の自然にマッチしていて、三面がガラス張りで見晴らしがよくて明るい。内部は全て木を素材にして作られており、旧近衛邸の庭が眺められるように、テーブルが外に向いている。庭を眺めつつ、お茶を飲むというのもオツなものであった。
「年末を京都で過ごすの、何年ぶりやろう。」
と考える。三十年ぶり?それとも四十年ぶり?
京都の街の中のオアシス的な存在「御所」。