映画の一シーン

 

わざわざ和服でおいでいただいた、シンガポール人のカップル。よくお似合いです。

 

セレモニーの後、参加者全員での写真撮影があった。結婚式の全体写真、学校のクラス写真のように、横長に数列に並んだ人々を前から撮るのだと思っていた。しかし、今回は芝生の上に立った人々を、上から撮るというものだった。それが最近、日本での流行なのかどうかは分からない。その後、参加者全員に風船が配られた。それを一斉に離して、セレモニーが終わった。緑に囲まれた山間を、六十数個の風船が上がって行く。なかなか、前途に希望を感じさせる演出だった。

通常の結婚式だと、ここで、披露宴、食事になるのだが、今回はその後、一時間余の「アフタヌーンティー」があった。この辺り、「ヨーロッパ式」なのである。「ティー」と言っても、シャンパンとかビールも飲めるのであるが。そこで、参加者同士が歓談する。ゾーイとワタルは、順番に参加者と写真を撮っている。妻と僕は、ゲストを順番に巡り、挨拶をしていく。

「モトで〜す。マユミで〜す。(三波春夫でございます。あっ、関係ないか。)ふたり揃ってワタルの両親で〜す。」

などと、名乗った後、

「どこから来られたんですか?」

「ゾーイかワタルのどちらのお友達なんですか?」

などと話しを進めるのである。「どこから」という質問に対して、時々「カナダ」とか「オーストラリア」とか、思いがけない返事があって、思わずのけぞってしまう。本当に顔の広い二人である。やはり、欧米式というか、夫婦で、カップルで来られている方が多い。

ティーパーティーの半ばで、Nさんのギター弾き語りがあった。Nさん、某国立大学の海洋生物学の教授なのだが、歌が上手い。よく通る声と、抜群のギターテクニック。英国で、うちにおいでいただいたときも、よく歌っていただく。「玄人はだし」とは彼のこと。娘たちは、

Nさん、すごい!大学教授にしておくの、もったいないよ。」

などと、訳の分からない褒め方をしている。その日も、朗々とした声で、Nさんは二曲歌われた。いつもはボサノバかカンツォーネが多いのだが、今回は、日本語の「Everything」と中国語の「我的路」。どちらも同じ日本のシンガーソングライターの作品だと言う。

 Nさんの奥さんに感想を聞いてみる。

「まるで、映画の一シーンのようなパーティーね。そこに自分がいるのが不思議な感じがする。」

とおっしゃった。確かにその通り、僕は映画「華麗なるギャツビー」のパーティーのシーンを思い出していた。これまで一度も海外に出たことのない義弟が断言した。

「ここは日本とちゃう。」

確かに、そこは日本ではなかった。石川県の田園地帯に突如として出現した、とてもシュールな空間。

 

歌う海洋生物学者、Nさん。パーティーにこの方は欠かせない。

 

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