参加者たち
バージンロードの音楽はエルビス・プレスリー。リハーサルのためふたりは朝早く家を出た。
当日は幸い天候に恵まれた。屋外で「セレモニー」が行われたのだが、気温は二十八度くらい、暑すぎもせず、寒くもなく、天気予報が外れて、心配していた雨も降らず、理想的な午後だった。ふたりの「普段の行いがよかった」ということにしておこう。
芝生の上に並べられた椅子に着席したゲストを見渡す。
「う〜ん、まさに多国籍、ここが日本だと信じられない。」
そうつぶやいてしまう。
最終的な参加者の一覧表を受け取ったのは、三日前だった。僕はそれを見て、驚かなかった。参加者は新郎新婦を含めて六十四人、そのうち日本人十五人。つまり、四十九人の方が海外からの参加なのである。僕はそれを予測していたので、姉などに、
「おそらく外人ばっかりやけど、驚かんといてね。」
と警告というか、予告していた。「スピーチ」のところでも述べたが、海外からのゲストは、ふたりの育った英国、シンガポールはもとより、スペイン、ドイツ、フランス、ハンガリー、ドバイ、フィリピン、中国、香港、カナダ、オーストラリアなどの国から。皆よくそんな遠い所から、時間とお金を使って来てくれたと、感心し、同時に感謝したくなる。
ゾーイとワタルの友人たちは、遠い所を来ただけに「気合」の入り方が違う。シンガポールから来た数組のカップルは、男女ともに和服である。
「日本でのパーティーなんだから、格好も日本式の方がいいでしょ。」
とのこと。確かにね。でも、外国人女性の和服姿というのも、なかなかエキゾチックで良いもの。余談だが、インド人の結婚式に呼ばれたヨーロッパ人の女性がサリー姿も可愛い。
一番「気合が入ってる」と感じたのは、その日の夜、正確に言うと翌日の早朝であった。披露宴の後、会場での二次会が終わったのが夜十一時。その後、金沢の街のバーで三次会。朝四時にラーメンを食いに行った猛者もいたとのこと。
「せっかく日本に、金沢に来たんだから、徹底的に楽しむぞ!」
という気迫が、ヒシヒシと伝わってくる。
開始予定時間の二時半になり、まず、ワタルが登場。バックに流れる曲はエルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」(Can't Help Falling in Love)。歌っているのは振袖を着た末娘のスミレ、ピアノは世界的なピアニスト、ヴァレンティン・シーデマイヤー氏という豪華フィーチャーである。次に、バージンロードを通って、ゾーイが父親のハンさんと腕を組んで登場。母親のエレンさんがベールダウンをする。ハンさんは嬉しそう。式の前に彼に言った。
「韓先生、普通の親なら、一回しか味わえない感激を、私たちは二度味わえてラッキーですね。」
「確かに、モトさん。でも、お金も二回分要るけどね。」
おっしゃる通り。何かと「物入り」なこの二カ月であった。人前結婚ということで、ふたりの結婚は参加者の拍手でもって承認された。
交換した指輪を見せる新郎新婦。あれっ、どこかで一度見た光景。