海底トンネル比較

 

下の階はバイクが停まっていた。バイクの旅行者の多いのが驚きだった。

 

ユーロトンネルを青函トンネルと比べてみよう。青函トンネルの全長は五十三キロメートル余で、ユーロトンネルとほぼ同じである。一九七一年から掘り始めた青函トンネルの開通は一九八八年。十七年という、ユーロトンネルの二倍以上の工期を要している。何故か工費は九千億円と、ユーロトンネルの何故か半分。しかし、いかに難工事であったかは、高倉健主演の映画「海峡」を見て知った。いずれにせよ、海の底を掘って、何十キロメートルにも渡るトンネルを作るのは、膨大な時間と、ン兆円単位の金が必要なのである。

青函トンネルとユーロトンネル、このふたつのトンネルの一番大きな違いは、中を走っている列車であろう。車社会のヨーロッパでは、やはり車をお客さんにしないと儲からないようだ。最初は車を通すことも検討されたが、排気ガスを外に出せないので断念されたという。海峡トンネルを潜る列車の本数は、車を運ぶ「ル・シャトル」の本数の方が、旅客を運ぶ「ユーロスター」の本数よりも圧倒的に多い。また両トンネルを走っている列車も違う。僕は昨年新幹線の「はやぶさ」で青函トンネルを通ったが、明るくて新しい車両であった。「ユーロスター」の車両は古い。一部は、開業以来ずっと使われている。だから、かなりくたびれている。また「ル・シャトル」の車両も本当にドロドロという感じ。一応昔はステンレスで銀色の車両であったようだが、今ではすっかり煤けて、錆びた十円玉のような色をしている。

五十キロと非常に長いトンネルであるが、トンネル内の旅客列車の運用速度は百六十キロとのこと。だから「ユーロスター」は二十分くらいでトンネルを通過する。「ル・シャトル」がトンネルを出たとき、何分間トンネル内にいたかを知りたくて時計を見た。二十八分であった。ということは平均時速百キロ以上で走っていたことになる。重い車を百台以上積んでの時速百キロである。

「なかなか頑張ってるやん。」

僕は思った。

発車してから三十五分後に、フランスのカレーに到着する。乗車するときは進行方向から見て後ろから入ったが、下車するときは前から出て行く。フランス入国のパスポートは既に英国側で済ましてきているので、ノンストップで外に出られる。橋を渡って、フランスの公道に出たとき、ちょうど十時であった。チェックインしてから一時間半でフランスに渡たれたことになる。これは予想外に早い。英国側は小雨だったが、フランス側は日が差していた。

僕はその日まで、トラックもバスも、乗用車も一度に同じ列車で運んでいると思っていた。しかし、そうではなかった。僕の乗った列車は、二階建てで、普通の乗用車は入れても、トラックやバスは背が高すぎて無理、ちょっと背の高いワンボックスカーも難しいかなという感じ。発車するとき動物園の象の檻のようなものが見えたが、それがトラックとバスを運ぶ列車だった。トラックとバスの乗る車両は周囲を籠のようなもので囲っているだけで基本的にオープンな車両である。しかし、車輪の付いた台車の上に、更に背の高いトラックやバスを載せるわけで、トンネルの高さもそれなりに高くなっていることが予想される。

 

お相撲さんは絶対に通れない、トイレへ向かう階段。横には本当に僅かなスペースしかない。

 

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