白いウェア
あこがれのセンターコートの前に立つ。次回は是非中に立ってみたいもの。
弁当は無事荷物検査を通り、僕たちは中に入り、ツタのからまるセンターコートの前に立った。まだ、十二時前。ナンバーワンコートで試合の始まるのは一時から。僕たちは、しばらく、スタンドのない、平らなコートで行われている試合を見ることにする。切符と一緒に送られてきた「観戦ガイド」によると、会場には全部で十九面のコートがあり、そのうち八面は、公園のコートにように、スタンドがない。しかしまあ、大変な数の人である。コートとコートの間の通路は、両側にぎっしりと見物人がいるので、移動するのは大変、狭い空間を、人とぶつかりながら、
「ごめんやっしゃ、ごめんやっしゃ。」
と言いながら通り過ぎないといけない。人垣の隙間を見つけて、そこから女子のシングルスの試合を見る。
そもそも、テニスをすることは好きだが、見ることにはそれほど興味のない妻と僕は、先にも書いたが、選手の名前を殆ど知らない。ジョコビッチ、フェデラー、マリーとか、ウィリアムス姉妹とか、本当に有名な超トップクラスの選手くらい。彼らはシードされていて、センターコートとかナンバーワンコートで試合をする。スタンドのない「平土間」でやっている選手は、概ねノーシードの選手。
「お初にお目にかかります。」
と挨拶したくなる人ばかり。驚くのは芝生の短さである。ゴルフのグリーン以上に、きれいに短く刈り込まれ、人工芝でなく天然であることが信じ難い。
ウィンブルドンでテニスを見るのは初めてだが、「ウィンブルドン・テニス博物館」には、何故か一度来たことがある。そこに展示されていた女子選手のテニスウェアを見るにつけ、ウィンブルドンの歴史は、「女子選手のスカートの丈が短くなっていく歴史」でもあると思った。目の前の女子選手を見ていると、そのスカートの丈は、基本的に常にパンツが見えている状態まで短くなっている。
中学校の頃、テニス部の女の子は、白いプリーツスカートをはいていた。その下に、女子生徒はもちろん「見えても大丈夫だもん」というレースのついたパンツを履いていた。(アンダースコートと言うらしい。)「見せるためのパンツ」と分かっていても、たまにスカートの下からそれが見えると、僕は興奮してしまった。古き良き時代。目の前の女子選手を見ていると、風俗営業のお姉さんたちも着ないような超々ミニのウェア。そしてその下には、ガッツリと厚いパンツを履いている。それがしっかりし過ぎていて、色気も何もあったもんじゃない。
ウィンブルドンには厳しい「ドレスコード」があり、選手は白いウェアを着用しなくてはならない。それは、テニスウェアだけでなく、靴や下着にまで適用される。女子選手がウェアの下に見につけている下着も、白じゃないと駄目。ブラジャーの紐が見えて、それが白くなかったので、外すように言われた女子選手もいたとのこと。しかし、緑の芝生に、白いウェアが映えて、見ていて美しいのも事実だ。
ここまでしっかりしたパンツをはかれたら、色気もへったくれもないね。