シンガポールへの道
太陽が西に傾いてきた、ニューゲールの海岸で。
昼飯を食ってから、ニューゲールの浜に行く。セント・デイヴィッドに行くとき、きれいな海岸の傍を通ったので、車を停めて見学しようかと思った。しかし、その時は雨が強くなって、降りられなかった場所。海岸から道路を挟んで、パブがあるのを覚えていた。
「海の見えるパブで、ウェールズ名残りのビールを飲もうぜ。」
というのが予定だった。
パブ「デューク・オブ・エジンバラ」に車を置き、砂浜に出る。西に傾いた太陽。潮が引いていて、波打ち際ははるか遠くにある。逆光のシルエットが美しい。ものすごく可愛いアイスクリームヴァンがあった。海を見ながらパブでビールをと思ったが、パブからは、石を積んだ堤防があって、海が見えなかった。それで、「地元」のリトル・ヘイヴンのパブ「キャッスル」へ行く。そこで、四人でビールを飲みながら、今回の休暇の「総括」、「評価」について語り合う。
「名残惜しい。もっと居たい。」
と皆が言った。歩く場所や、美しい海岸が、歩いて十分、車で二十分の範囲にあり、便利がよかった。シンガポールに住む息子夫婦が、今度孫を連れて遊びに来たら。またここへ来て、孫を担いで、海岸を歩いてみたい。そうそう、僕たち夫婦には、八月に初孫が出来たが、シンガポール政府がコロナ禍で、外国人の入国を禁止していたため、まだ孫には会っていない。幸い、九月に入国制限が緩和され、ワクチン接種を受けた者は、入国が認められるようになった。僕たち夫婦と娘たちは、十二月にシンガポール行きの航空券を予約している。今は、
「無事に飛べたらいいのに。」
と祈るような気持ち。
十二月のシンガポール行きの話は、今回のウェールズ休暇を予約した後に決まった。
「もし、シンガポール行きが先に決まっていたら、ここには来なかったかもね。」
と妻と話す。しかし、来る価値のある場所、来てよかった場所、また来たい場所である。
今回も、娘二人と一緒の休暇になった。歩いていても、食事をしていても、人数が多い方が楽しいし、娘と一緒に休暇に来られること自体は、喜ばしいことなのだが。でも、本来、娘たちの年齢なら、ボーイフレンド、旦那、彼女たち自身の家族と休暇に行く方が自然なのでは、と思ってしまう。とりあえず、孫が一人できたが、孫は何人いても大歓迎。娘たちも、早く、僕たち夫婦と違う相手と休暇に行って欲しいような、欲しくないような。
最後に、この休暇の直前に、親友の一人が亡くなった。僕よりうんと若く、まだまだこれからの人だったのに。今回、何をしていても、常に心のどこかで、彼の死について考えていた。冥福を祈りたい。休暇中に仕上げるつもりでいた絵は、帰る前日に無事描き終わった。
牛さんたちが横断中。しばらくお待ちください。
＜了＞