守護聖人
セント・デイヴィッドの町にある、セント・デイヴィッドを祀った、セント・デイヴィッド教会。
歩いている途中、妻がしょっちゅう立ち止まっている。何をしているのかと思って見ると、道端にあるブラックベリー(黒イチゴ)を食べているのだ。このブラックベリー、英国では、あちらこちらに生えており、夏の終わりから秋にかけて実を付ける。僕たちも、毎年森にそれを獲りに行き、ジャムを作っている。美味しいブラックベリーの獲れる場所と、美味しくない場所がある。それを地元民は知っている。妻はその癖なのか、ブラックベリーのある場所を通ると、賞味しなくては気が済まないらしい。
「野イチゴとみると口に放り込む、あなた、熊みたいな人やね。」
と妻に皮肉を言う。薄暗くなり始めたので、ショートカットをして駐車場に戻る。駐車場に着いたとたん、霧が晴れ、薄日が差し始めた。家に戻ると、夕日が辺りの雲を紫色に染めた。美しい。
火曜日も予報通り朝から雨。午後遅くには晴れるらしいが。午前中は、京都の母とオンラインで話したり、絵を描いたりして過ごす。オンライン会議には、途中から娘たちも参加、久々にお祖母ちゃんと話している。
今回休暇中に、
「絵を一枚仕上げるぞ。」
という「目標」を立てていた。「目標」、「義務」から逃れ、ノンビリするための休暇だと思うが、僕の性分か、何時も何故か「目標」を立てて、それに「邁進」してしまう。
「あなたには『暇な時間』というのは永久にやって来ないわ。」
と友人に言われたこともあった。常に何かをして、自分を忙しくしてしまうから。
リビングの窓の外に見える海。雨の海というもの情緒があってよい。雨の中、海岸を散歩している人がいる。必ず犬が傍にいる。
昼前、思ったより早く雨が上がったので、車で、セント・デイヴィッドの町に向かう。「聖デイヴィッド」はウェールズの「パトロン」、「守護聖人」だという。何をした人何なんだろう。阪神のスアレスみたいに、九回に登板して、試合をきっちり勝ちに導き、セーブポイントを稼ぐのか。聖デイヴィッドも、九回に監督から登板を告げられるのかも。あれは「守護神」だった。
「どうして、日本のプロ野球は、クローザーのピッチャーを『守護神』っていうんだろう。」
と思わず考える。娘たちは「ペイトロン」と発音していたが、「パトロン」、ホステスさんに、お金を出してあげるような人なのかも。ともかく、英国、「連合王国」の四つの国にはそれぞれ「守護聖人」、「パトロン」がいる。
「イングランドはセント・ジョージでしょ、スコットランドはセント・アンドリュースでしょ、北アイルランドはセント・パトリックでしょ・・・」
何故かスラスラ言える。と言うのも、英国の永住権を取ったとき、「英国の生活順応度テスト」に受かるために勉強したから。そのテストで、無理矢理覚えされられたのだ。ということは、いわば、英国の常識なのね。
雨の合間、ブロード・ヘイヴンの海岸に虹が架かる。