イギリスという国はあるの?
疑問その一:「イギリスという国はあるの?」
いきなり核心に迫る疑問だが、これは「ない」というのが正解だと思う。
僕の住所に海外から手紙が届くが、イングランド(England)、グレート・ブリテン(Great Britain)、ユナイテッド・キングダム(United Kingdom)と三種類の国名が書かれていることがある。
「どれが正しいの?」
どれも正しい。僕はユナイテッド・キングダムに属する、グレート・ブリテン島にある、イングランドという国に住んでいるのだから。
日本で言うところの「イギリス」という国、正式には「グレート・ブリテン島および北アイルランド連合王国」(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)と言う。落語の「寿限無寿限無」ではないが、これでは長すぎるのでヨーロッパの人は日本で言う「イギリス」を指して、United Kingdomの頭文字を取り「UK」と言うことが多い。「連合王国」という限りは、複数の国から成り立っていることになる。事実、「連合王国」は、
l イングランド
l スコットランド
l ウェールズ
l 北アイルランド
の四つの国から構成されている。
「連合王国」の国旗「ユニオンジャック」はこれらの国の国旗を組み合わせたものである。これらの「国」は日本の「県」のようなものではない。各国には大幅な自治が認められており、それぞれに議会があり、教育制度、裁判制度なども異なる。
そもそも、今の「連合王国」が出来たのはスコットランドが参加した一七〇七年で、国としての形を成した時期が日本に比べて格段に新しい。そのスコットランドも、「連合王国」からの独立を希望する人が多く、二〇一五年には独立のための国民投票が行われた。結局否決され、「連合億国」に残ることになったが。大阪がいくら独自の文化圏、経済圏を持ち、東京と一線を画したいと言っても、まさか独立して「ビリケンさん」を国旗とした「大阪国」を作ろうという話はないよね。
それでは、「イギリス」という日本語はどこから来たのか。それは「イングランドのもの、イングランドの言葉」という「イングリッシュ」から由来したものだ。本来は「イングランド」だけを指す言葉だったのだが、いつの間にか日本では「連合王国」全体を指すように意味が変化した。だから、「イギリス」という概念は「連合王国」を指すのか「イングランド」のみを指すのか非常に曖昧、「ない」ということにして話を進めたいと思う。しかし、それではこれ以上話が進まなくなるので、「英国」と言う言葉が「連合王国」を指すと仮に定義し、僕の説明を続けていきたい。