ジャズとカクテルと餃子
宇都宮駅前の「餃子の像」の前で。よく見ると上下に割れたのをセメントでくっつけてある。
仙台を発車した後、また空席が見つかったので、そこに座る。次の停車駅は大宮なので、結局「立席券」でありながら、全部座って過ごせるということ。
「ラッキ〜!」
宮城県の仙台を出た「はやぶさ」は、鳥の王者らしく、「福島」、「郡山」、「新白河」、「那須高原」、「宇都宮」、「小山」等、福島県、栃木県なんて田舎の県の駅を一切無視し、一挙に都会埼玉県の大宮に向かう。大宮は、上越新幹線、北陸新幹線の接続駅、列車の半分以上のお客さんが降りた。
僕は函館に向かう前夜、栃木県の宇都宮にいた。従妹のサキコを訪れていたのだ、彼女と会うのは三年前の僕の父の葬儀以来。僕と彼女は子供の頃近くに住んでいて、しかも年齢が一歳しか違わなかった。サキコの両親、つまり僕の叔父と叔母は、サキコをどこかへ連れて行くとき、僕や姉をよく誘ってくれた。僕の両親も、僕と姉をどこかへ連れていくとき、彼女をよく一緒に連れて行った。つまり、子供の頃、ほぼ兄妹のようにして育った。
転勤の多いご主人と結婚し、日本のあちこちに住んでいたサキコだが、来年のご主人の定年退職を期に、また関西に戻るという。そして、先週、京都に家を見つけ、来年から住むとのことだった。彼女とまた京都で会えるのは嬉しい。
「宇都宮を訪れるのも、これが最後だろうな。もう一生来ることはないだろう。」
僕はそう思いながら宇都宮からの列車に乗った。
宇都宮の名物はギョーザ。「餃子の街宇都宮」という看板が駅前に立っており、駅には「餃子の像」が立っている。僕にはどう見ても、「ゲゲゲの鬼太郎のお父さん」にしか見えなのだが。サキコによると、この「餃子の像」、数年前に場所を移動する際、作業者が倒して割れてしまったという。現在は修理がしてあるのだが、そのいい加減な修理の仕方に笑ってしまう。そんな「市民の宝」を倒す方も倒す方、いい加減に修理する方もする方、それを許してしまう方もしまう方。宇都宮の人はおおらかなんだ。
また、宇都宮は「ジャズ」と「カクテル」の街でもあるとサキコは言った。
「ジャズを聴きつつカクテルを飲む、餃子をつまみながら。」
宇都宮の人のセンスは素晴らしい。
前日、宇都宮から函館に向かう際、仙台でお客さんの格好ががらりと変わったのが面白かった。仙台までの列車「やまびこ」には、スーツを着た男性が多かった。いかにもビジネスですって感じ。しかし、仙台から乗った「はやぶさ」には、野球帽にジャンパーという男性が多く、東北に来たという感じがした。
十一時五分東京着。
定時では十一時四分だったので、盛岡での五分遅れを、頑張って一分まで取り戻していた。
東京駅での乗務員交代。ここでも女性が多い。