列車運行に関する謎
僕の乗る列車が入線してくる。さて、この列車が引き返すときには何が起こるのか。
十二時半にクルーズを終わり、フェリーに乗って列車の乗り場のあるキングスウェアに戻る。水の傍は気持ちが良い。観光船で楽しいひと時を過ごせた。
僕にはまだ解けない謎がひとつあった。それはキングスウェア駅付近に「転車台」が見つからなかったことである。転車台というのは、機関車の向きを変える円形の施設のこと。電気機関車やジーゼル機関車は左右対称で両側に運転台が付いている。しかし、蒸気機関車は左右非対称なので、折り返し運転の際には、転車台で百八十度回転しなければならない。その施設が、往路の列車の窓から見た限り、なかったのだ。
「どないして、方向を変えるやろ?」
その謎は、間もなく解けた。一時十分前に、SLに引かれた列車が入ってきた。それが十三時発の、僕の乗る列車になるのだ。ちゃんと機関車が引っ張っている。乗客を降ろした後、機関車は切り離され、待避線から一度去って行った。再び、機関車が現れる、方向は変わっていない。そして、反対側から停まっている客車にそのままドッキング。つまり、帰りは、機関車がバックで引っ張るのだった。これは予想外の展開。
バックの機関車に引っ張られた列車が走り出す。乗客は往路より更に減り、車両にいるのは僕ひとり。途中、一ヶ所だけ踏切がある。列車は踏切の前で一時停止。見ると、機関士が列車から降りて、遮断機を閉めている。
「なるほど、手動式の踏切なのね。」
僕は感心して見ている。遮断機を降ろした後、機関士は再び列車に乗り、スタートさせた。そして、そのまま走っていく。
「あ、あの踏切、誰が開けるねん?」
せっかく謎がひとつ解けたのに、またひとつ新たな謎が生まれてしまった。
列車は途中、海岸沿いを通り、レンガで出来た古式ゆかしい高架橋を走る。列車がそんなところを走っている写真も撮りたいのだが、僕自身が列車に乗っているので、それは叶わない。英国にはSLの走っている路線が結構あるが、あくまで観光用で、軽便鉄道、トロッコ列車という趣の物も多い。今回乗ったダートモース鉄道は、片道三十分だが、駅もあり、客車も本格的で、一日に九往復も走り、「鉄道で旅をしている」という気分になれた。しかし、乗客の少なさを考えると、その将来が、何となく心細くなってくる。船と組み合わせることにより、魅力的なパッケージを作ろうという、運営会社の努力はうかがえるが。是非存続してもらいたい。こんなことを考えている自分に、
「僕って、結構『鉄道おたく』、『鉄ちゃん』なんや。」
当たり前のことを、改めて認識してしまった。
一時半にペイントンに着く。ロンドンに戻る急行列車はペイントン発なので、ここでその列車を待つか、一度トーキーまで帰って、トーキーから乗るという選択があった。僕はトーキーに戻ることにした。海辺でもう少しゴロゴロしてみたかったから。
昔は英国の車両、やたらドアが多くて、どこからでも乗降できるようになっていた。ここ十年ほどで見なくなったが。