英雄たちの夜明け

 

董卓を演じる呂暁禾(リュイ・シャオホー)、悪役を楽しそうに演じている。

 

ドラマの第一話で、まず登場するのが、「董卓」という人物。このドラマの良いのは、登場人物を「グディー(良い者)」、「バディー(悪者)」という色分けをしないで、その人物の良い所、悪い所も公平に描いているところ。しかし、その中にも、幾つか例外がある。それがこの董卓である。彼は、徹底的に「悪者」として描かれている。董卓は西涼(中国の北部)の出身で、皇居を武力で占領し、皇帝を操り人形として使う。狡猾で、好色、名誉欲と猜疑心の塊、目的のためには手段を選ばない人物として登場する。

「悪者やと一発で分かるわ。」

メイクからして髭面、ボサボサ髪の悪者風である。曹操が彼の暗殺を計画し、失敗したところからストーリーは始まる。曹操は、命からがら、首都の洛陽から逃れる。

 この曹操という人物、揚先生の宿題レポートの中にも「策略家」、「合理主義者」と書いた。彼の人柄を表わすエピソードをひとつ紹介しよう。董卓暗殺に失敗し、逃亡した曹操は、伯父の家に身を寄せる。彼が昼寝から目覚めると、外で刀を研いでいる音が聞こえる。自分を殺すために刀を研いでいると考えた曹操は、伯父の一族を皆殺しにしてしまう。しかし、後で、それは、伯父が彼をもてなすために、豚を屠ろうとして、刀を研いでいたたけだということが分かる。しかし、曹操は、伯父一族殺害を、「自分の大望のための小さな犠牲」と片付け、悪びれる様子もなく、その場を立ち去る。

加えて彼の話術の巧みさ。彼の話に乗せられて、一杯食ったり、油断したりして、滅びた敵は数知れず。三国以外では最後まで頑張った袁紹も、曹操の「お茶作戦」に引っ掛かり、茶を飲んでいるうちに攻撃の好機を逃してしまう。

董卓という「バディー」がいたことで、良いこともあった。全国の十八の諸侯たちが「反董卓連盟」を組んだことである。これによって、これまでバラバラであった諸侯たちに協力の動きが見られるようになる。彼らは袁紹の下に一堂に集い、将来のストーリーの担い手たちがお互い紹介され、その立ち位置が明確になる。

その、集会の中に、三人の男が現れる。それは劉備と関羽と張飛であった。

「私は漢王の末裔の劉備。漢王室を助けるために馳せ参じた。」

と、劉備は自己紹介をする。

「たった三人で何が。」

と他の諸侯たちは笑って取り合わない。しかし、そのとき、連盟軍の誰も歯が立たなかった董卓の武将華雄を、関羽が一撃で片付ける。関羽は、景気づけのために自分に差し出された燗酒が冷めないうちに、相手を切り殺し、戻って、まだ温かい酒を飲み干すというパーフォーマンスをやってのける。こうして、劉備は、十九人目の諸侯として、連盟に参加できる。

 残念ながら、この連盟、長続きしない。諸侯たちが互いにけん制し合ったり、気に入らない相手を陥れようとしたからである。しかし、その連盟の中から、曹操、劉備など、将来の英雄が現れる。

 

長いひげがトレードマークの関羽。彼が張飛と一緒にかかっても、呂布は倒せなかった。

 

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