閉店時間
川が流れ白鳥が浮かぶ、なかなか良い雰囲気のソールスブリーの街。
大聖堂を出て、川沿いの商店街を駐車場に向かって歩き出す。途中本屋に寄る。僕たちが店に入ると、店員の兄ちゃんが、ワゴンの本を、出入り口を塞ぐように置きだした。閉店時間が来たことを客に知らせるための、かなり露骨な「追い出し」である。
「わたしも、店で閉店時間になってもなかなか帰ろうとしない客がいると、時々露骨に『追い出し』をかけるのよね。」
とノリコが言った。
「英国は良いよ、五時が閉店時間なら、少なくとも五時まで店を開けているから。これがドイツだと、五時閉店というのは、五時に店員が、片付けて、着替えて、店を出て、鍵をかけるということなの。だから、十五分前には追い出されちゃうよ。」
と僕が言う。
「昔よく行ったドイツのマーブルクの温水プールでは、終了時間の十五分前になってもまだ泳いでいると、監視員の兄ちゃんがホースで水をかけるの。」
あれは冷たかった。
五時半ごろにソールスブリーを出発し、ロンドンへ戻る。雨脚がだんだんと強くなってきた。高速道路に入ると、周囲の車が巻き上げる水しぶきで、辺りが真っ白になり、前がよく見えない。おまけに夕暮れが近づき、少し暗くなってきた。僕の愛車、その気になれば二百キロは出る車であるが、慎重に百キロ前後で走り続ける。
今日は話し相手がいるので、運転していてもそれほど退屈しない。うちの家族は、車に乗ると皆すぐに寝てしまうので、その眠気がこちらまで伝染してきて困ることが多いが、ノリコは今日ずっと起きていてくれている。
激しい雨と夕闇という悪コンディションなのに、ガンガン飛ばしている車も多い。横からドンドン抜かれていく。高速三号線に入ってから渋滞。案の定、追突事故であった。ゆっくり走っていれば良いものを。
三号線が終わってロンドンに入る。ラグビーのメッカ、「トウィッケナム・スタジアム」の前を通り、リッチモンドへ。ノリコをアパートの前で降ろす。
夕方の渋滞がまだまだ残る中、家に帰り着くと八時半。長時間の運転の割には元気。色々勉強できて、とても有意義な日であった。
今日の最大の収穫は何かな、うーん、「ダックレース」の秘密を知ったことかな。
一日お付き合いいただいたノリコと記念撮影。
2010年8月