トロピカル・クリスマス

 

 

Tシャツとショーツで迎えるクリスマス、ヨーロッパ生活が長い僕には、イマイチしっくり来ない。僕はこれまで、二度暑い場所でクリスマスを迎えたことがある。一度はソロモン諸島のガダルカナル島、一度はマレーシアのペナン、今回が三度目の「熱帯のクリスマス」である。

その日は、家族全員が集まって、盛大にクリスマスディナーを囲もうという計画。朝から料理担当のワタル、マユミ、モニが集まって、オーブンを使う順番などを決めている。今日のメインは三つあり、ひとつは七面鳥、次にラム、おまけにサーモンまであるという。それに、ローストした野菜が付け合わせで来るので、オーブンが大忙しになる。前夜から、七面鳥の表面にスパイスを塗ったり、腹の中に詰め物を入れたりの作業が行われていた。手伝おうと思っても、既に、狭いキッチンに人が多すぎ。体調不良もあって、僕は昼間部屋で横になっていた。

五時ごろに、 

「プレゼントを開くよ。」

とミンが僕を呼びに来る。ディナーの準備はあらかた済んだらしい。リビングにはモダンなクリスマスツリーが置かれ、その下に皆へのプレゼントが置かれていた。それを順番に開くという、クリスマスの儀式が始まるのだ。僕たち家族が英国から持ってきていたプレゼントのひとつに「カレンダー」があった。息子たちの結婚式の写真、英国の家族の写真、エンゾーの写真など、選りすぐりのものをカレンダーにしたもの。

「ワティたちは、金はあるし、欲しいものは何でも買えるからね。金で買えないものを。」

と考えて作ったものだった。エンゾーは「ピーター・ラビット」の食器セットをもらっていた。彼がそれを使って、何かを食べるようになるのも、もうすぐだと思う。僕は、百色のドイツ製水彩色鉛筆をもらった。昨年、日本滞在のとき、退屈しのぎにまた書き始めた絵、百円で買ったボールペンと、千円くらいで買った二十四色の水彩色鉛筆で描いてきたが、ここで道具は本格的になりそう。

 七面鳥の丸焼きと、骨の付いたラム(これは赤ワインで煮込んだという)、レモンの上に乗せて焼かれたサーモン、その他野菜、ジャガイモ、芽キャベツ等、野菜のローストがテーブルの上に並べられる。ヨーロッパのクリスマスディナーに馴染みのないハンさんとエレンさんは、珍しそう。ハンさんは、モニに教わりながら、七面鳥の切り分けに挑戦している。Pさんに抱かれたエンゾーも、キョロキョロお目で、珍しそうに料理を眺めている。

「孫の顔も見られたし、クリスマスも皆でお祝いできたし、先ずは、めでたい、」

僕はホッとしていた。同時に、これで、大きなイベントも終わったし、ボチボチ帰ろうかと考え始めていた。予定の一月三日までは、ちょっと耐えられそうにない。ここは環境を変えるのが一番だと。

 

ご馳走を見守るエンゾー。来年は一緒に食べられるよ。

 

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