原色のタイ寺院
日本の寺院のモノトーンの美しさとは逆を行く、タイの仏教寺院。
海岸通りに車を停めて、近くの寺を訪れる。ホテルのあるスーリン・ビーチから、プーケット・タウンまで、道中いくつかのタイの寺院の前を通った。降りて見学したいとも思ったが、雨も降っていたのでやめておいた。
「派手でんなあ。」
僕は唸った。基本的に、タイの寺は原色の世界、基調色は朱色と赤。目がチカチカする。靴を脱いで、裸足になって、寺院の建物の中に足を踏み入れる。暑さを避けて、お寺の中に涼みに来たのか、グタッという感じで床に腰を下ろしているおじさんがいた。
プーケット・タウンで、幾つかコロニアル風の建物を見る。カラフルだが、タイ寺院に度肝を抜かれていた僕にはあまり印象が強くない。天候がまた回復し太陽が顔を出す。それにつれて暑くなってきた。
妻が旅行案内書で調べたところ、丘の上に、見晴らしが良い場所があるというので、そこへ行こうということになる。タイ語の標識に何度か迷いながら丘の上まで行くと、一軒のレストランがあり、客席が展望台のようになっていた。確かに、眼下にプーケット・タウンの街並が広がり、その向こうに海が見える。しかし、数ヶ月前、六甲山頂の展望台から、神戸の街と瀬戸内海を見たようなド迫力はない。
冷たい飲み物を注文し、それを飲みながら風に吹かれているのは気持ちが良い。バックに流れているのはカーペンターズの「雨の日と月曜日は」。
「何でやねん。」
まさかここで、この曲を聴くとは思わなかった。しかし、ここまで不釣合いな曲が流れると、かえって感動を覚えてしまう。
展望レストランから坂を降りる途中に、もう一軒の寺院があった。そこは、修道院というか、お坊さんの修行の場所になっているらしく、その日見た寺院の中でも格段に大きく立派だった。
僕:「あ、あそこにお坊さんがいたはる。」
妻:「そう。」
オレンジ色の衣を着た、僧侶が建物の中に何人かいた。門のところに「こんな格好の人は入ってはいけない」という図入りの看板があって、女性のタンクトップやショーツは駄目だと書いてあった。僕たちはふたりとも、一応まともな格好をしている。
「入っていいですか。」
と僧に英語で聞いてみても、通じるわけないよね。反応がないのでお邪魔ませていただく。
「ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃ〜。」
中は、瞑想を行うような広いホールだった。竜の彫刻が見事。門の所に頭がある。胴体は階段の手すりとして上へ伸びて行き、尻尾が上の建物を取り囲んでいる。一際高い場所に、仏様が座っておられた。大仏とまではいかないが、五メーター以上の背丈がある。もちろん、金色でピッカピカ。まぶしい。タイの寺院は、本当にサングラスの要る場所だ。
キッチュな仏像が何故か自然に目に写るのは、気候のせいだろうか。