祖父ちゃん祖母ちゃんの夢
動物園に到着、これから動物さんに会うぞ。
Day 4
今日は、皆で動物園に行くことになった。エンゾーが動物園に行くのは、生まれて初めてである。
「孫と一緒に動物園に行くのが夢やったん。」
と僕は妻に言った。でも、これって、僕だけではなく、どの祖父ちゃん祖母ちゃんにとっても、一度はやってみたいシチュエーションではなかろうか。
「シンガポール動物園」は、シンガポールの観光名所にもなっている。僕と妻は一度訪れたことがある。狭いシンガポールにしては、広大な敷地を誇り、豊かな自然に恵まれた動物園である。
エンゾーが午前中の「お昼寝」から目覚め、昼ご飯を食べた後、十二時半ごろから、タクシーで動物園に向かう。息子の家はシンガポールの右下の方にあり、動物園は左上、シンガポールを対角線に横切ることになる。とは言え、所要時間は、四十分くらい。シンガポールがいかに狭いかが分かる。ちなみにシンガポールの面積は約七百平方キロメートル、東京都二十三区が約六百キロ平米なので、ほぼ同じだ。
門をくぐって進んでいると、橋が架かっている。橋の上から見下ろすと、三メートル以上ある、大きなワニがゴロゴロ。先ずは、ワニのお出迎え。シンガポール動物園のすごいところは「檻」がないことである。ゾウであろうが、キリンであろうが、ライオンに至るまで、彼らのいる場所と、観客のいる場所は、堀で区切られているだけ。その間に柵や檻が一切ない。だから、柵や檻に遮られることなく、動物たちを観察することが出来るのだ。この臨場感は素晴らしい。エンゾーは珍しそうに、サイ、シマウマやキリンなどを見ている。
「エンゾーくん、動物すきなんやね。」
公園に行ったとき、犬が傍に来ても、彼が全然怖がらないのを思い出した。
広大な土地に作られた動物園、ひとつの動物から別の動物に移動するまでの距離も結構長い。熱帯雨林の中という環境、結構湿度が高く、歩いていると汗が噴き出す。園内にはグルリとトラムが走っており、後半は体力温存のためにそれに乗ることにする。
三時ごろに、休憩所に入り、ワタルが買って来た、ベトナム風バゲットを食べる。ベトナムは元フランス領、フランスパンが食べられている。その本格的なフランスパンと、アジア風の中身が不思議にマッチしている。エンゾーは米で出来たビスケットを美味しそうに食べている。
「孫と一緒に動物園に行く」という念願を果たした、僕と妻は、四時ごろにタクシーで動物園を発って、戻ることにした。途中、シンガポールの中心である、マリーナベイ界隈を通る。両側にバリケードが作られている。
「ここ、二週間前にあった、F1のシンガポール・グランプリのコースだったの。」
とワタル。シンガポールでのレースは、モナコと同じように、公道で行われるという。
檻や柵のない動物園。ひとつの動物のエリアが、いかに広いか分かると思う。