バブル経済?
夜のジュー・チャット・ロード。「ショップハウス」という、一階は店舗、二階は住居になっている。
「ところで、近頃、お父様、お母様はどうなさってます?」
ワインクラブで、ハンさんに聞いてみる。
ハンさんとグオさんは、中国、天津の出身。僕と妻と一緒で、彼等以外の家族、親戚は、皆中国におられる。中国での披露宴のとき、六十人くらいの親戚縁者の方々がドドッと来られた。その数とエネルギーに圧倒される。披露宴の際、ハンさんの母上が、同じテーブルで、僕の横に座られた。でも、当時は北京語が話せないので、話が出来ない。非常に残念。六十人の中で、英語を話せたのは、外資系の銀行に勤めているという、ゾーイの従兄弟ひとりだけだった。
「せっかく新しく親戚が大勢出来たんだから、話したいよね。」
それが、僕が北京語の勉強を始めたきっかけだった。妻も最近、北京語の勉強を始めた。何故「中国語」と書かないで「北京語」と書いているかと言うと、中国にはもう一つ「広東語」という一大勢力があり、これが、僕の目からすると、全く違った言葉なのだ。
話を戻そう。
「もう二年以上、父母と会ってないんですよね。」
とハンさん。ちょっと寂しそう。中国は有名な「ゼロコロナ政策」を取っている。外国人には、今でも二週間の検疫が義務付けられているとのこと。ハンさん夫婦は、シンガポール国籍を取っているので、外国人扱い。中国に入国しても、二週間足止めされることになるのだ。それじゃ、とても帰れない。
十一時ごろにワインクラブを出る。外は少し涼しくなっている。ハンさん夫妻とは北京語で話していたが、どうしようもなくなると、ワタルが通訳に入ってくれる。助かった。
「シンガポールはバブルの頃の日本と似ているかも。」
と、帰りのタクシーの中でワタルが言った。
「僕なんかより、桁違いの金を稼いでいる友だちが何人もいる。」
ヘ〜え、そんなもんなの。皆、お金持ちなんだね。そう言えば、街にお金の臭いがする。特に最近は、景気が良いらしい。と言うのも。コロナで、中国、台湾、日本、韓国などが、まだまだ外国人の入国制限をしている中、シンガポールはいち早く国を開いたからだ。それで、現在、多くの会社が機能をシンガポールに移しており、国際会議などがシンガポールで開催されることが多いらしい。つまり、シンガポールにお金が流入しているのだ。
確かに、シンガポールは今、オープンだ。昨年シンガポールに来たときには、PCR検査の証明書、ワクチン接種証明書など、山ほど書類を求められた。また、入国してからも一週間、毎日検査をする必要があった。今年はそれらが見事になくなっていて、ちょっと拍子抜け。 ちなみに、日本は、十一月から外国人の入国が無制限に許可されるようになったが、それまでは、かなり厳しい制約があった。
昔はここが海岸だったという。今の海岸はここから一キロ以上離れている。