ペナン出発

 

スチームボート、鍋物を皆でつつく。暑い国で熱い物も美味しい。

 

 「スチームボート」のレストランを出て、アパートに向かう。英国で言う、「ボクシングデー」も終わろうとしている。十二月二十六日に別にボクシングをするわけではない。召使達が主人から貰ったプレゼントの箱、ボックスを開ける日だから「ボクシングデー」。

このまま部屋へ戻って寝るのかと思っていたら、何と、子供達が「ロードハウス」というアパートの前のバーへ「招待」してくれるという。子供達も、僕が明朝ペナンを去ることを知っている。でも、子供にバーに招待されるなんて変な気分。チズコの言う、「何でもあり」のマレーシアならこそ。ジェイソンはホステスさんのいるカラオケバーに子供たちを連れて行ったことがあるという。

「それで、きみはその『きれいなお姉さん達』のいるカラオケで、何を歌ったの。」

とオリバーに尋ねる。

「ドラエモン。」

「ひえ〜。」

 バーと言えども子供連れなので、さすがにカウンターやボックスではなく、外のテーブルに座る。子供達はジュース、ジェイソンはビール、僕はバーボンのロックを注文する。つまみに、落花生が出され、子供達は一生懸命それを割って食べている。

 オリバーが「ウンコ」という。ジェイソンが慌てて、オリバーを隣のホテルのトイレに連れて行った。

「ここのバー、トイレないの?」

と僕は不思議に思ってチズコに聞く。チズコによると、バーのトイレの便器に金網が貼ってあり、小便しかできないと言う。先ほど、ビーチのトイレに入ったが、そこにも小便器しかなかった。チズコがマッサージパーラーでトイレに行ったら、ビデしかなかったことも。「外でウンコはするな」というのがマレーシアの国是なのだろうか。

バーの大きなスクリーンでは、英国の一部リーグ、「ウェストハム」対「フルハム」の試合をやっている。ライブだ。今日、英国はボクシングデーなのでサッカーの試合がある。英国は今午後一時。観客やコーチの格好を見ると、それほど寒そうでないので安心する。

太陽に当たって僕も疲れたのだろうか。アパートに帰るなり、ブラックアウト状態で眠ってしまった。

十二月二十七日、ペナンを発つ日。五時半に起きる。七時前にチズコが起きてきて、ふたりでトーストを食べた後、彼女がコムターまで送ってくれた。ジェイソンと子供達はまだ眠っている。コムターの前で、彼女と会ったときのように、ハグと頬にキスして別れる。

昨日鍋物を食べたとき、調子に乗って唐辛子を入れすぎたので、今朝から下痢。これからバスに乗るのにちょっと心配。トイレに行き、そのとき初めて、マレーシアのトイレは、ドアを背にしてしゃがむのではなく、壁を背にしてしゃがむことに気付く。こうするとホースの水でお尻を洗っても、水が壁にかかるだけで、辺り一面水浸しにならないのだ。

 

チズコのアパートの前の海岸通を毎朝実に様々な人が散歩している。