季節はずれの梅
蕪蒸し。カブラを食べると冬の味がする。
帰りの地下鉄の中で、「アダルト小説」の作者の僕は、すっかり「スケベなおじさん」になって、車内にいる若いお姉ちゃん達を観察していた。
「今年は冬になっても、ショートパンツやヒラヒラのミニスカートを履いている娘が多い。」
しかし、その下には大抵厚いタイツを履いていたが。
そのときふと、何の脈絡もなく、
「今日、叔母ちゃんを呼んで夕食に『鶏鍋』をしようよ。」
と、母が言っていたのを思い出した。そして、その母は気分が悪いと言って寝ている。ということは、「鶏鍋」は僕が準備するしかないということに気がついた。
「いつも母ちゃんには世話になっているし、今日は一丁やりますか。」
という「使命感」がムクムクと湧いてきた。
母の家に戻ると母はまだ寝ている。冷蔵庫の中をチェックすると、鶏肉と白菜とネギとニンジンはある。近くのマーケットで、豆腐、春菊、三つ葉、薩摩揚げ、春雨等の鍋物の用意を買う。
一度使命感に燃えると、僕は凝り性だ。ニンジンを紅葉の形に切ろうし始める。しかし、これは難しい。結局、季節はずれだが、梅の形にさせてもらう。鶏肉はアクと脂肪を取るために下茹でする。
準備と下ごしらえが大体終わったので、五時前に、銭湯、船岡温泉へ行く。サウナでミュンヘンから来たドイツ人とドイツ語で話しこんでいたら、ついつい長く居すぎてしまい、のぼせてしまった。三十分くらいで、早々に風呂屋から出る。
家に帰ると、母は気分が良くなったと言って起きていた。六時過ぎに、現在は老人介護の仕事をしている叔母が、仕事を終わって到着。「鶏鍋大会」が始まった。
鶏鍋は好評。母も、叔母もパクパクと食べてくれた。
「鍋物ってついつい食べ過ぎてしまう。」
と叔母。
気がつくと八時前、慌てて父の家へ行く。明日の朝早く、僕は京都を発たなければならないのだ。外は激しい雨。父はまだ起きていた。父と継母に別れを告げる。今回は結構あっさりした別れだった。継母が、
「お父さん、毎週電話がかかってくるし、またすぐに声が聞けますやん。」
と言ってくれたのが嬉しかった。
生母の家に戻る。台所がきれいになっている。叔母が片付けてくれたようだ。叔母はもういなかった。叔母はバイクで来ていたはず。
「この激しい雨の中、どうやって帰ったんだろう。」
でも、今日、従兄弟と叔母とゆっくり話せたのはよかった。今回は五日間という短い日本滞在だったが、実に色々な人と話す機会があった。
クリスマスということで、宇都宮の餃子像もサンタの格好。(写真は従姉妹のサチコ提供)