明るい大聖堂

 

明るい雰囲気のノリッチ大聖堂の内部、天井の構造が美しい。

 

大聖堂へ向かう。もともと大きな町ではないので、どこへ行くのも十五分以内で行ける。門を潜ると、目の前に大聖堂が立っていた。僕は一本の尖塔のあるその白い建物を外から見て少し驚いた。

「明るい雰囲気の大聖堂やん。」

 大聖堂の入り口は、少し離れた近代的な建物にあった。入り口だけが、石造りで古い。普通、英国で教会へ入るのには金は要らないのだが、ここは五ポンド、入場料が要る。

中へ入ってみても、外側と変わらず「白い」という印象。

「明るいなあ。」

と僕は言った。大聖堂というと、ドイツのケルン大聖堂は言うに及ばず、これまで訪れたダーラムやセント・オーバンスの大聖堂でも、皆「黒々」としているという印象。外見も煤けているし、中も薄暗い、どちらかと言うと「暗い」、「重々しい」感じがした。もちろん、その暗さが、歴史、時代の流れを醸し出しているのだが。しかし、このノリッチ大聖堂は、全てが白くて、清潔な感じがする。

 通路の真ん中に鏡が上向きに置いてある。

「天井をご覧下さい。」

ということらしい。鏡を覗き込んでみる。すごく複雑で、ちょっと前衛的なパターンの天井だ。

大きな教会を造るとき、壁は単に石を積んでいけばよいが、天井を作るのはかなりの複雑で高度な技術が必要だと聞いたことがある。とにかく、ケルン大聖堂など、一二六〇年に作り始めたものの、当時の技術では屋根と塔を築くことができず、最終的に完成したのは、何と六百年後の一八六〇年なのだ。

そんなエピソードを聞いて以来、僕は教会へ行くと、必ず上を向いて、その天井の構造、パターンを観察し、写真に撮っている。

僕が天井を熱心に眺めていると、ひとりの男性が現れ、

「この天井、最初は木を渡しただけの平たい、ありきたりのものだったんです。落雷で塔が崩れ、天井が壊れたときに、今の丸屋根にしたんです。美しい構造であるだけでなく、聖書のエピソードが順番に語られているんです。」

と説明してくれた。「聖書のエピソード」って何だろう。下から見ると距離があり過ぎて見えないが、後で写真を見ると、聖書のエピソードを語る小さな彫刻が、順番に天井に貼り付けられていた。

回廊に出てみる。教会の中庭を巡る回廊というのは、どこの国、どこの教会でも、なかなか風情のあるものだ。何となく中世にタイムスリップしたような気分になる。回廊から見る、夕日の当たった大聖堂の白い建物がオレンジ色に染まり、美しい。回廊に囲まれた正方形の中庭の真ん中には誰が作ったか、雪ダルマがあった。

 

回廊に囲まれた中庭。誰かの作った雪ダルマがあった。