百五十万分の一の確率

 

京都で鍋を囲む、母、叔母と妻。鍋物は日本の冬の定番。

 

さて、ここで話題を私自身の旅に戻しましょう。年末から日本を訪れた妻と私は、今回「二十ン年ぶり」に日本の「お正月」を経験することになりました。先に述べたように、十二月二十五日、家族でのクリスマスパーティーを済ませ、翌日「ボクシング・デー」にロンドンを発った私は、アムステルダムで乗り換えた後、翌日の朝、大阪、正確には関西空港に着きました。空港から京都まで乗り合いタクシーに乗ったのですが、そこで、やはりロンドンから来たジャックという若い男性と話をしていました。彼はお母さんが日本人で、年末年始、京都に住む祖父母を訪れるために、私と同じ飛行機でやって来たそうです。

 その日の午後、母親の家に着いた後で最初にやったこと、まずは「銭湯」つまりパブリック・バス・ハウスに行くことでした。母の家の斜め向かいにあるこの銭湯、「船岡温泉」の広い浴槽に浸かることを、僕はいつも楽しみにしています。

 翌日、新しいカメラを買いに、「京都のリージェント・ストリート」である四条通に出かけました。カメラを買って、四条通を歩いていると、どこかで見た顔に出会いました。

「ハロー、ジャック。」

それは、前日、空港からの乗り合いタクシーで一緒だった若者でした。その横にいる小柄な白髪の女性が、彼のおばあちゃんなのでしょう。おばあちゃんは不思議そうに、孫と私を交互に見ています。

「僕たち、昨日、関空からのタクシーで一緒だったんですよ。」

と私は日本語で説明しました。

「ここでまたあなたと出会うなんて、どれほどの確率なんだろう。」

とジャックが英語で言います。

「百五十万分の一くらいかな。」

と私は言いました。その根拠は、京都市の人口百五十万人だからです。ともかくも、奇妙な偶然でした。

十二月二十九日の昼に、仕事の都合で出発が遅れた妻が京都に到着しました。その日の午後、ふたりで、二年前に亡くなった私の父の墓参り行きました。小川通りという道を歩いて行ったのですが、そこには茶道(ティー・セレモニー)の家元(伝統の踏襲者)である「裏千家」があります。その立派な門構えを見て、妻は驚いています。

「弟子たちからたっぷりお金をもらって、潤っているんだろうね。」

私たちは言い合いました。

 妻の着いた夜は、叔母と四人で「鶏鍋」(鶏と野菜入りのホットポット)を食べました。「鍋物」と呼ばれるこの料理は、テーブルの上にポータブル・バーナーを置き、その上に陶器でできた鍋を乗せて、その中で煮た肉や野菜を直接取って食べるというもの。火を炊きながら食べられて温かいので、冬の日本の代表的な料理になっています。私も、今回の日本滞在中に三回「鍋物」を食べました。

 

お雑煮とおせち料理。ちなみにこれが朝御飯!

 

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