オーバートレーニング

 

琵琶湖をバックに、頂上で記念撮影。(「広報部長」の常田くん撮影。)

 

「わあ、すごい!」

「わあ、きれい!」

蛇谷ゲ峰(じゃやがみね)の頂上に着いたとき、皆が声を挙げた。実際、その景色は素晴らしかった。三百六十度のパノラマ。足元には琵琶湖が広がり、対岸には伊吹山。右に目を移せば鈴鹿山脈、対岸の近江八幡、更に右に回転すると比良山、丹波山地、若狭湾まで見える。隊長のMくんが、

「頂上からの景色は最高やから。」

と、繰り返していたが、その意図が分かった。

僕はその日曜日、高校の同級生十二人と一緒に比良山系の蛇谷ゲ峰に登っていた。高校の同級生が何年か前に「山岳部」を結成し、ぼぼ毎月、京都近郊の山に登っていることは聞いていた。そして、僕も参加したくて仕方がなかった。それで、今回八月ごろに、山岳部のM隊長に、

「十月は京都にいるんで、その間に山登りがあったら、連れてってね。」

とメールを打っておいた。そうしたら、十月二十一日、山に登るからという連絡を貰った。

 京都に着いて、僕は考えた。

「一緒に登るメンバーは、常連、経験者。付いて行けやろか。」

僕は結構歩く方。働いているときも、ほぼ毎日、昼休みには四キロを四十五分くらいで歩いていた。しかし、普段は平地しか歩いていない。それに、九月は、仕事が忙しかったのと、三年ぶりくらいに風邪を引いたので、ほとんど歩いていなかった。京都に着いて、僕はまず、トレッキングシューズとストックを買った。トレッキングシューズは英国でも持っているのだが、余りにかさ張るので持ってこなかった。杖は、山岳部の写真を見ると、ほぼ全員が持っているので、真似をして買った。

「置いていかれたらどないしょう。」

ということが頭から離れない。買ったトレッキングシューズと杖を使ったトレーニングを始める。近くに船岡山という丘があって、その頂上に織田信長を祀った建勲神社がある。そこまで登るのに百二十段の石段がある。それを、三キロの鉄アレイと二冊の時刻表を入れた五キロのリュックを背負って十往復。杖があると、足の負担がグッと少なくなることを知る。汗が鼻から滴り落ちる。かなり足に来た。何日間かそれをやる。

 さて、登山の数日前、備中松山城に登るとき、山道を歩いた。上り坂で、足を上げようとすると右膝が痛む。

「しもた、オーバートレンーニングやった。」

と気づき、登山の数日前は完全休養で、膝の快復を待つ。

果たして、トレーニングの成果は・・・歴然!ベテランの皆さんに付いて行けたし、翌日も全然筋肉痛はなく、朝、普通に鴨川まで散歩できたし。

 

朝九時、朝日を浴びて登り始める。

 

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