次はキガリでね
玄宮園の池から見る彦根城天守閣。ここから眺めるのが一番かも。
彦根城は堀と道路を挟んで、「玄宮園「という庭がある。広い池があり、池のほとりに、庵と言ってもいいくらいの小さな建物が建っている。
「ここから見る天守閣が最高!」
と僕は思った。池の向こうの鬱蒼とした森の上に覗く、白い天守閣が美しい。
博物館に鎧があった。その兜がひこにゃんの帽子の原型になっていることに気付いた。赤い甲冑で、兜も赤く、両側に弓なりの金色の板が天を指している。そもそも「白い猫」も井伊家に因縁のある動物で、ひこにゃんは結構歴史的事実に基づいて作られているのだ。
一時二十五分、博物館の横の門が開き、係員が登場し、
「後五分でひこにゃんのパーフォーマンスが始まります。お時間のある方はご覧になっていってください。」
と案内がある。三十人ほどが門の中に入る。
「パーフォーマンスと言っても、ゆるキャラですので、非常に『ゆるい』ものです。覚悟してご覧ください。」
警告のアナウンスも入る。いよいよひこにゃん登場。縁側を歩いて来る。パーフォーマンスも、巻いてある旗を広げたり、ちょっとポーズを取ったり、確かに「ゆるい」。しかし、可愛い。気温が二十五度を超える結構暑い日で、中に入っている人は大変だと思う。案の定、半分の十五分で「水分補給のための」休憩があった。
「ひこにゃんを見られてよかった。」
満足〜。ゆるやかな気持ちで、二時前に彦根城を後にする。帰りの電車の中で冷たいビールを飲み一息。しかし、その後、ゆるくなりすぎて眠ってしまって、気がついたら電車は京都駅に停まっている。乗って来るお客さんをかき分けて、慌てて降りる。
「次はキガリでね。」
そう言って、僕はGさんと別れた。日曜日の夜、高校の同級生のOさんとGさんと一緒に居酒屋で飲んでいだ。ふたりとも国際的な人で、世界中を駆け回っておられる。Oさんはノーベル賞を狙う大学教授。Gさんは、国際協力機構の職員で、これまでタンザニア、ケニア、ポーランド、ソロモン諸島、ヨルダンなど、ちょっと「面白そうな」国で仕事をされてきた。僕はポーランンド、ソロモン諸島、ヨルダンへ彼を訪ねたことがある。彼の次の赴任地は、アフリカの「ルワンダ」とのこと。七月には旅立つらしい。
「行きたい、行きたい、知らない場所へ行ってみたい。来年は絶対訪ねていくからね。」
と僕はGさんに約束した。「キガリ」というのはルワンダの首都で、彼が七月から住む町である。来年が楽しみ。
午後十時に、GさんとOさんと別れて、北大路バスターミナルからバスに乗ろうとする。十時二十一分発の「二〇四系統」が来たのでそれに乗る。そのバス、赤いランプが点いている。ってことは終バス?!ええ〜、世界一の観光地京都で、十時二十一分に終バスが出るの?!ロンドンドンではバスも地下鉄も終夜運転なのに。京都の「ナイトライフ」はいったいどうなっているのだろう。多分ない?
ルワンダにはゴリラがいるそう。見られたらいいな。
<了>