エピローグ

海があるので、殆ど行かなかったホテルのプール。海で泳ぐ方が何倍も面白い。

 

帰りの飛行機も、定時にケファロニアを出発。無事に英国に戻って来ることができた。当然のこととは言いながら、コロナとか、戦争とか、こんなに色々あると、先ず、無事にホリデーに行って帰って来られたことが、ラッキーだと感じる。また、英国はお目にかかれないような海を堪能した満足感もあった。

 木曜日に戻り、金曜日は授業の準備、土曜日に四時間の授業をこなして、日曜日に中国語検定を受け、その夜は来客。月曜日には息子がシンガポールから、嫁さんと一緒にロンドンに到着。ヒースロー空港まで迎えに行く。スコットランドで行われる、友人の結婚式に参列するためだという。残念ながら、孫はシンガポールに残った。今回は会えない。息子夫婦が不在の間は、嫁のご両親が面倒を見てくださるという。ご両親も大変だと思うが、羨ましくもある。

 土曜日の、日本語学校の授業。「ことわざ」を取り上げた。

「『大は小を兼ねる』、このことわざの使い方わかりますか?」

と僕が質問。手が挙がる。

「はい、ヘンリーくん。」

「大をするトイレでは大も小もできますが、小をするトイレでは小だけで大はできません。」

そう来ましたか。クラス中笑いの渦。

 休暇の後、一連の予定のうち、個人的に一番重要視していたのが、中国語検定。日曜日の午後に、ロンドン大学アジアアフリカ研究所で受験。この歳で、今更試験というのも、結構な負担だが、何か強制されるものがないと、やらないと言うのも事実。最近歳のせいで物忘れがひどくなっているよう。中国語の語彙をガンガン覚えることで、脳を刺激して、機能を保持しようという目的もあるかな。試験は予想して以上に難しかった。特に聞き取りは全然分からず、鉛筆を転がして、四択に答えていた。ダメかも知れない。しかし、試験場を出た時、僕は妙に清々しい気分だった。

「わずか二年余で、よくここまで来たよな。」

「自分を褒めたい」気分だった。

「これであかんかったら、しゃあない。」

 息子は英国でも忙しく、ずっと、会社のロンドン支社に出勤していた。ほとんど話す時間がないままに、息子夫婦は友人の婚礼のためにスコットランドへ。彼らがシンガポールに戻る前々日になって、やっと家族で行動できた。リーズ城まで行ってピクニック。最終日はケンブリッジを観光。

「息子(僕の孫)を将来ケンブリッジ大学に通わせたいの。だから、今日はその下見。」

と嫁のゾイが言った。孫はまだゼロ歳。何とも気の早い話。中国人は、日本人にも増して、教育熱心のよう。

  

道路脇でよく見かけたミニ教会。

 

<了>

 

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