世界で一番美しいビーチ?

 

上から見たミルトスビーチ。不思議な色をしている。

 

ケファロニアに行く前、島での「マスト・シー(必見)」として、ミルトスビーチが挙がっていた。「世界で一番美しい海岸」という触れ込み。話半分としても、そこまで書かれると、一度訪れてみたくなる。そして、実際、山の上から見下ろしたミルトスビーチは、ちょっと信じ難いくらい、神秘的な青い色だった。

アソスを出た僕たちは、ミルトスビーチを見下ろす展望台を通り過ぎ、細いジグザグの道を降りて行く。白い崖の下に車を停める。崖は、四十五度くらいに傾いた地層がむき出しになっている。上から見えた白い浜は、砂ではなく、まっ白な石で出来ていた。浜から見ると、海は水色をしている。

「水が水色で何が不思議やねん。」

と言う方がおられるかも。しかし、海の色はたいてい濃い青か、薄い緑色で、水色というのは珍しい。

海岸の石は、卵のような形をしているのだが、石浜は砂浜と違って歩きにくい。裸足で歩くと、足の裏が痛いし、直ぐに足を取られる。どこでも泳ぐ僕たちは、早速海に入る。水の中に入ると、別に水の色は変わったところがない。ごく普通の海水に見える。

「世界で一番美しいビーチねえ。」

僕は考え込んだ。確かに色は独特だが。

「この海岸は、どっちかと言うと、上から見るものなのかも。」

という結論に達した。確かに上から見ると、その色に度肝を抜かれる。しかし、水に入ってしまうと、どうってことがない。

ここも、「マスト・シー」の場所にしては人が少ない。三百メートルくらいの長さの浜にいるのは五十人くらい。もちろん、夏休みに入り、本格的な観光シーズンになると、もっと人が増えるのかもしれないが。前にも少し書いたが、ケファロニアの海岸は、人が少なく、ノンビリ楽しめるところが良い。それに、地中海は、干満の差も少なく、波も穏やか。波打ち際に来ても、まるで池の畔にいるよう。

「地中海は大きな水たまり。」

って、誰かから聞いたことがある。干満の差が何メートルもあり、波が岩にぶち当たる英国の海岸とは、ずいぶん趣が違う。

 ミルトスビーチから、今度は妻の運転でスカラに戻る。また、山越えの道を通る。ギリシアの道を走っていると、しばしば道路脇にある「ミニ教会」に出会う。小さいものは三十センチくらい、大きなものでも人の背丈くらい、教会のミニチュアである。何のために、というのはよく分からないが、なかなか可愛い。もうひとつ、ギリシアの道を走っていて、しばしば出くわすのがヤギ。乾燥した土地、草も少ない。ヤギは粗食に耐えることができるのか、あちこちで飼われている。時々、道路を横切ったりするので、注意して運転しないと。

 

ミルトスビーチに降り立つ。水色の海の色が印象的。

 

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