「窓から逃げた100歳老人」
原題:Der Hundertjährige, der aus dem Fenster stieg und
verschwand
ドイツ語題:Hundraåringen som klev ut genom fönstret och
försvann
(2009年)
<はじめに>
ひとりのスウェーデン人が、フランコ将軍、トルーマン大統領、毛沢東、金日成、ジョンソン大統領、ド・ゴール大統領などの二十世紀の重要人物と出会い、酒を酌み交わすという、現実的にはまったくあり得ない、しかし、愉快な物語である。この物語に、リアリティーを求めるのは全く無意味。「楽しゅう読んでなんぼ」という本。
<ストーリー>
その日、百歳の誕生日を迎えたアラン・エマニュエル・カールソンは、老人ホームでの誕生パーティーを前に、部屋の窓から逃げ出した。彼は、バスターミナルの案内所へ行く。そこで、とにかく一番早く出発するバスに乗ろうとする。その時、大きなトランクを持ったひとりの若い男が、トイレに入ろうとしていた。しかし、トランクはトイレのドアには大きすぎる。若者は、アランにそのトランクを見ていてくれるように頼む。しかし、アランはそのトランクを持ったまま、来たバスに乗ってしまう。
森の中でバスから降りたアランだが、どこへも行く宛がない。途方に暮れているアランに、ひとりの中年の男が声を掛ける。ユリウス・ヨンソンと名乗るその男は、窃盗、アルコールの密造などで暮らしていた。彼は、アランを駅舎の一部にある、自分の住居に連れて行く。アランは自分の持っているトランクは、駅で若い男から盗んできたものだと伝える。ユリウスは、トランクの中身を山分けすることを条件に、アランに一宿一飯を提供することを約束する。
トランクがなくなったことに驚いた若い男は、旅行案内所の職員を脅迫し、老人がどのバスに乗ったかを知る。そして、戻って来たバスを乗っ取り、運転手に、老人の降りた場所に行くように命じる。百歳の老人が行方不明になったことで、老人ホームは大騒ぎになる。通報を受けた警察では、アロンソン警部が、捜索の指揮を執ることになる。
その日の夜、ユリウスの家のドアを叩く者がいる。彼が開けると、若い男が立っており、
「じじいとトランクを今すぐ出せ。」
と叫ぶ。ユリウスは若い男を招き入れる。アランとユリウスは男の隙を見て彼を殴り倒し、冷凍室に閉じ込める。アランとユリウスがトランクを開けると、五千万クローネという大金が入っていた。ユリウスは、冷凍室のスイッチを切るのを忘れる。翌朝、冷凍室の扉を開けると、若者は凍死していた。ふたりはトランクと若者の死体を車に乗せ、急いで家を出る。彼らは、工業地帯に並んでいるプラスチックの容器に、若者の死体を隠す。その容器は、間もなくトラックによって運び去られ、アフリカの国、ジブチ行の船に乗せられる。
若い男が持っていた金は、マフィアのボス、グナがロシアとの取引のために準備し、テロリスト・グループ「ネバー・アゲイン」に運搬を頼んだものであった。アロンソン警部は、旅行案内所の職員、バスの運転手の証言からユリウスの住居を発見し、踏み込む。しかし、そこは既にもぬけの空。彼は、警察犬を使って捜査を続ける。警察犬は工業地帯のある場所までやって来るが、そこには老人も、ユリウスも、若者もいなかった。
アランとユリウスは屋台で昼食を取る。ユリウスは屋台の持ち主ベニーに多額の金を渡し、車の提供と運転を頼む。ベニーはそれを承知し、三人はベニー車で北へ向かう。三人は、既に警察が自分たちを追っていることを知っていた。夕方、三人は森の中で美しい女性に会い、彼女に宿と食事を提供してくれることを頼む。三人の頼みをいぶかしく思いながらも、女性はそれを受け入れる。三人は彼女の家に泊まることになる。
アランは、一九〇五年に生まれた。父は共産主義者で、ロシア革命に影響されロシアに渡るが、そこで死亡する。その後すぐに母も失った十五歳のアランは、ニトログリセリンを作る工場で働き始める。火薬に興味を持ったアランは、独学で爆発物について勉強し、日曜日になると自分で調合した火薬を川原で試していた。しかし、ちょうど火薬をしかけた場所に、知り合いの男が現れ、その男を死なしてしまう。アランは四年間の禁固刑を受ける。その間もアランは勉強を続け、ニトログリセリン工場に技師として復職する。彼は、そこで、新しく入社してきたスペイン人の青年の教育係となる。青年は、スペイン政府の要人の娘と関係を持ってしまい、故国を追われ、スウェーデンに逃れて来ていた。スペインの王政が倒れたことを聞いた青年は、スペインに帰ることを決意する。アランも青年とともにスペインに渡る。スペインに戻った青年は、共和国軍に身を投じる。アランも橋や道路を爆破することで青年に協力する。しかし、アランはふとしたことから、政敵のフランコ将軍側に付くようになる。彼は、フランコのために働いた後、その功績によりフランコと面会できる。フランコは、アランが船でスペインを離れることができるよう手配をする。
アランが乗った船は米国へ向かう。ニューヨークの入国審査で、アランはフランコ将軍からの手紙を見つけられ、入国を拒否される。「爆弾の専門家である」と主張するアランが正しいかどうかを試すために、アランはメキシコ国境に近い、ロス・アラモス基地に送られる。爆弾の製造の経験があることを認められたアランは、ロス・アラモス基地で、物理学者のオッペンハイマーの下働きとしての仕事を与えられる。時に、オッペンハイマーとそのチームは、原子爆弾の設計を行っていた。
アラン、ユリウス、ベニーを泊めた美女、グニラは、翌日買い物へ行った際、新聞の見出しに目が行く。そして、三人が指名手配されていることを知る。グニラは家に帰るなり、三人にライフルを突き付け、直ぐに家を出て行くように迫る。ユリウスはグニラに事情を話し、トランクの中の金を四人で山分けすることを提案。グニラもそれを承知する。グニラはサーカスから逃げ出した象、ソニアを飼っていた。ベニーはその象が怪我をしていることを見つけ、手当てをする。ベニーは獣医の勉強をしてことがあったのである。彼と弟のボスは「学業中は仕送りをする」という金持ちの伯父の遺言を利用するため、三十年間に渡り、大学である科目を勉強し、卒業直前に学科を変えるということを繰り返していた。その中に獣医学も含まれていたのだ。しかし、伯父の遺した金も底をつき、数年前からベニーは軽食の屋台を出していた。ベニーはバスを買い、それを改装して象のソニアも乗せて移動することを提案。建築学もかじったことのある彼は、買って来たバスの改装を始める。
原子爆弾の起爆方法が見つからず暗礁に乗り上げていた会議で、アランは自分の考えを述べる。そのアイデアは皆が認めるところとなる。そのとき、副大統領のトルーマンが会議に顔を出した。アランに興味を持ったトルーマンは、アランを夕食に誘う。酒を飲み交わし、懇意になったアランとトルーマンに、ルーズベルト大統領の死の知らせが届く。トルーマンは大統領となり、ホワイトハウスに向かう。彼はアランもワシントンへ連れて行く。ワシントンで、トルーマンはアランを、中国国民党の要人である女性、ソン・メイ・リンを引き合わせる。ソン・メイ・リンは、アランに共産党軍と戦うために、爆薬の専門家として中国に来てくれないかと尋ねる。アランもそれを受け、彼はソン・メイ・リンと共に中国に渡る。
中国では蒋介石の率いる国民党軍の旗色が悪くなり、次第に毛沢東の率いる共産党軍が勢力を伸ばしていた。アランは国民党軍に囚われていた毛沢東の妻、江青を助ける。それを知った国民党軍に追われたアランは、チベットへと逃げる。彼は、そこでイラン人の共産主義者たちと出会い、彼らと一緒にヒマラヤを越え、インドからアフガニスタンに出て、イランに向かう計画を立てる。彼らは、苦労してヒマラヤを越える。しかし、イランに辿り着いた際、同行者は共産主義者であることが発覚し、銃殺される。アランも、危険人物として、テヘランの刑務所に収容される。
金の運搬を依頼したグナは、アランとユリウスに追っ手を差し向ける。しかし、その電話は警察に盗聴されていて、アロンソン警部の知ることとなる。フォード・ムスタングに乗った追っ手の男は、森の中のグニラの家を突き止め、そこに押し入り、金と運び屋の若者、ボルトを出すように迫る。しかし、アランはその追っ手を象の糞の中に導き、転んだ男の上に、象を座らせて男を圧死させてしまう。ユリウスはその男をムスタングのトランクに押し込み、浮浪者にその車を運転させて、国外に行くように命じる。追っ手の男から何の連絡もないことにしびれを切らせたグナは、自ら森の中の家に向かう。しかし、グナが到着する直前に、アランやユリウスたちは、象を乗せたバスで家を離れていた。グナはそのバスを追跡する。しかし、不意にブレーキを踏まれたバスに追突、怪我をしたグナはユリウスたちのバスに乗せられ連れ去られる。バスに乗っている全員が指名手配されたため、外部との連絡係として、ベニーの弟のボスが呼ばれる。アロンソン警部は事故現場に着く。そこにはシートに血の付いた車が乗り捨てられていた。警部は、その時点で三人の男が行方不明になっていることを重大視し、アラン、ユリウス、ベニー、グニラに対して、殺人容疑での逮捕状を請求する。
イランの刑務所から逃げ出すために、アランは、自分の爆薬の知識を使って、イランの国家を助けると提案する。おりしも、英国の首相チャーチルの訪問が予定され、イランの秘密警察は、チャーチルの暗殺を計画していた。アランはそのための爆薬の調合とセットアップを担当する。警察長官が自分のコーヒーカップで煙草の火を消す癖を見つけていたアランは、その計画の実行の直前に、コーヒーカップの中身をニトログリセリンに入れ替える。案の定、ニトログリセリンが爆発、長官と側近は死亡する。アランはそのどさくさに紛れて逃げ出し、テヘランのスウェーデン大使館に保護を求める。アランは「友人」のトルーマン大統領の口利きで、一九五三年、無事祖国に戻ることができる。
意識を取り戻したグナは、隙を見てピストルを奪い取り、ユリウス、アラン、ベニー、グニラに金を返すように迫る。そのとき、ベニーの弟のボスが現れる。
「お前はピラニア。」
「お前はならずもののボス。」
グナとボスは抱き合う。彼らは、若い頃、一緒に悪事に手を染めた仲間、「義兄弟」だったのだ。意外な知己との再会によって、グナも仲間に加わることになる。ボスも参加したため、アランとユリウスの仲間は六人になった。黄色いバスに乗った彼らの旅が続く。
久しぶりに故国スウェーデンで平穏な生活を送っていたアランの前に、腰の低い外国人が現れる。ユーリ・ボリソビッチ・ポポフと名乗る男は、ソ連の物理学者であるという。彼は、ソ連での原子爆弾の開発のためにアランの力を借りたいと言う。アランは承諾する。ふたりは潜水艦でモスクワへ向かう。モスクワに着いたふたりは、スターリンと夕食を共にする。スターリンは、上機嫌で歌いだすが、アランがかつてファシストのフランコを助け、米国の核兵器開発に協力し、チャーチルの暗殺を妨害したことを聞き、怒り心頭に発する。彼は、アランをウラジオストックの政治犯収容所へと送る。そこでアランは五年間を過ごすことになる。ウラジオストックの収容所には、もう一人の西洋人が収容されていた。ヘルベルト・アインシュタインというその男は、兄で有名な物理学者である、アルベルト・アインシュタインと間違えらえてソ連へ拉致されていたのであった。アランとヘルベルトのふたりは、労働キャンプからの脱出を計る。おりしも、朝鮮戦争が勃発し、ウラジオストックの港には、北朝鮮へ送る武器と弾薬が溢れていた。ふたりの計画は、アランの得意の火薬を使い、武器弾薬の入ったコンテナを爆発させ、その混乱に紛れて逃げようというものであった。
その計画が実行される。その効果はふたりの想像をはるかに超えるものであった。爆発は次々と別の爆発を引き起こし、一晩にしてヴラディオストックの街は瓦礫の山となった。アランとヘルベルトは、高級将校の制服と書類を奪い、ソ連の高級将校になりすまして、北朝鮮へと逃げる。ピョンヤンに入ったふたりは、時の首相、金日成との面会を求める。その際、息子の金正日はふたりの正体を不審に思い、スターリンに問い合わせようとするが、その時、ちょうどスターリンの死の知らせがもたらされる。何とか金日成との面会を果たしたふたりだが、金日成はふたりが偽物であることを見抜く。その場で銃殺されそうになったふたりだが、そのとき、ピョンヤンを訪れていた毛沢東の取り成しにより助かる。毛沢東は、アランが自分の妻を命がけで助けた恩義を忘れていなかったのだ。毛沢東は、ふたりに偽造パスポートと多額ドルを準備し、ふたりの国外脱出の便宜を図る。彼らが次に着いた場所、そこはインドネシアのバリ島であった。
バリ島でヘルベルトは現地人女性アマンダと結婚する。「バリでは何でも金で買える」をモットーとするアマンダは、政党を結成。その地方の知事に当選する。ヘルベルトとアマンダはふたりの男の子をもうける。アランも、バリで平穏な生活を送る。数年後、アマンダが駐仏大使として、パリに移ることになった。アマンダは、アランも通訳として同行しないかと尋ねる。アランはそれを受け入れ、ヘルベルト、アマンダと共にパリに向かう。
アマンダの大使として認証式の日、米国のジョンソン大統領がフランスを訪問していた。フランスのド・ゴール大統領は、アマンダをジョンソン大統領にも引き合わせる。「通訳」として、アランもその場に居合わせる。アランは、ド・ゴール大統領の通訳が、スパイであることを見抜く。アランの慧眼に感心したジョンソン大統領は、彼を後ほど食事に誘う。ジョンソン大統領は、アランに使い道を見つけ、CIA長官にアランを紹介する。
アランはモスクワのボリショイ劇場の前にいた。ユーリ・ボリソビッチ・ポポフと会うためである。ポポフはアランを見つけ驚く。
「あんたは死んだはずの、アラン・エマニュエル。」
二人はウオッカを飲み交わしながら、これまでの人生について話す。アランは、軍縮のために、ソ連の核兵器の情報を米国に流す、つまりポポフに米国のスパイになることを提案する。
「米ソのお互いが相手の本当の状態を知れば、核戦争の危険も下がる、軍縮につながる。」
とアランは言う。アランを収容所に送った罪の意識に悩んでいたポポフはそれを受け入れる。ふたりはそれから、何年にも渡り、核兵器の情報をお互いに交換し続ける。
ジブチへ向かう船の中で異臭に気付いたエジプト人の船員は、容器の中に死体を発見する。彼はその死体の所持品を自分のポケットに入れた後、死体を海に捨てる。ジブチに上陸した船員は、爆弾テロに巻き込まれて死亡する。ジブチの警察は、所持品から犠牲者がスウェーデン人であると判断、スウェーデンの政府に連絡をする。また、ラトビアのリガで、車の解体業を営む男が、解体したフォード・ムスタングの中の死体を発見する。同じく所持品から、スウェーデン政府に連絡が届く。アロンソン警部は、アランと同行者が殺したと思われていた三人のうちふたりが、外国で死亡していたことを知り驚く。ようやく黄色いバスに追いつき、アランと面会したアロンソン警部は、「三人目」の男グナも無事でいることを知る。一体警察は「殺人容疑」の実証が出来るのであろうか・・・
<感想など>
物語では、老人ホームから逃げ出した百歳のアラン・カールソンの逃避行と、彼のこれまでの人生が、交互に描かれる。両方で、最も重要な役割を果たすのが「酒」である。
全然日本語を喋れない「外人さん」が日本の飲み屋で、日本人の「親爺」たちと仲良く談笑をしている光景を見たことがある。「酒」は、言葉、文化を越えたコミュニケーションの手段なのだ。主人公、アラン・カールソンも酒が大好き、強い火酒「シュナップス」を飲むことを無上の喜びとしている。普段はそれほど社交的でもない彼だが、酒を酌み交わす相手とは、打ち解け、十年来の友人のように話をすることができる。相手が、国家元首であろうが、要人であろうが、関係ない。共産主義、資本主義、ファシズム、そんなイデオロギーを、彼の酒は超越してしまう。「酒を飲んだら人間皆一緒」というのが、彼のやり方である。日本語を話せない外人さんが、「言葉を越えて」親爺さんたちと付き合えたように。アランは、酒を通じ、フランコ、トルーマン、スターリン等と打ち解ける。特にトルーマン大統領とは、「飲み友だち」として無二の友人になってしまう。
また、「酒」は人間を動かす原動力となりうる。平たく言えば「酒好きの人間は酒を飲むためなら何でもする」ということ。アランが、スターリンの逆鱗に触れ、五年間閉じ込められてウラジオストックの収容所から脱出しようとした理由が、
「ぼちぼち酒が飲みたくなった。」
と言うのも面白い。彼はヒマラヤを越える際、ヤギの乳で酒を造ることを覚える。
「自分に出来ることは、ヤギの乳で酒を造ることと、原子爆弾を作ること。」
とアランはうそぶく。アランにとって、酒飲みにとって、原子爆弾は酒と同じレベルでしかないのだ。
最近、酒の害が叫ばれる中で、この本はひとつの「酒への賛歌」であると言える。アランは極めて非政治的な人物である。主義、イデオロギーには何の興味もない。そして、この物語が主義主張を越えて、人間が分かり合える可能性を示しているのは嬉しい。それには色々な手段があるだろう、音楽とか芸術とか。しかし、「酒」もその手段と一つとなり得るのだ。
もうひとつのこの本の魅力は、時間的、空間的な広がりの壮大さであろう。アランの放浪は、スウェーデン>スペイン>米国>中国>ヒマラヤ越え>アフガニスタン>イラン>スウェーデン>ロシア(モスクワとウラジオストック)>北朝鮮>インドネシア>フランス>ロシア>スウェーデンと続く。時間的には、一九二九年から一九八二年に及ぶ。彼の会った歴史上の人物は、
スペインのフランコ将軍
米国のトルーマン大統領
中国の江青(毛沢東の妻)
ソ連のスターリン
北朝鮮の金日成
北朝鮮の金正日
中国の毛沢東
米国のジョンソン大統領
フランスのド・ゴール大統領
ロシアのブレジネフ書記長
この他に実際は会ってはいないが、蒋介石、チャーチルなども登場する。かなり無理な展開もあるが、これほどの時代と、地理的な広がりをカバーし、ひとつのストーリーまとめあげた作者に敬意を表したい。
私事になるが、この本はオーディオブックとして聴いた。その大部分を聴いたのが、ニュージーランド旅行中であった。ニュージーランドの雄大な自然の中、山や、川や、海や、雲を見ながら独りで車を運転しながら、私はこの物語を聴いていた。人間が作り出した「政治」「イデオロギー」のバカバカさと卑小さを感じるには、絶好の環境であったと言える。この物語をもしまた再読したら、私は同時にニュージーランドの風景を思い出すと思う。読んでいて、元気になる、楽しくなる本であった。
(2014年2月)