何でもオンライン その二
多くの人々が老人に代わって買い物をするボランティアを引き受けた。(NHSボランティア募集サイトより)
「ロックダウンになって、一番影響を受けていないのはあなたね。」
と妻に言われた。確かに。朝起きて午前中は馬牧場で作業。日本語教師も、元々それほど沢山のレッスンをしているわけではない。午後も、その一部分がオンライン授業に変わるだけで、それほど変化がない。コロナ禍で、「ホース・サンクチュアリ」の運営は、金銭的な影響を受けたが、馬たちの生活とその世話は、全然変わらない。色々と暗い話が多い中、そんなことを知らないのんきな皆さんと一緒にいるのは、悪いことではなかった。
さて、ロックダウンで最大の影響を受けたのは、高齢者だ。コロナウィルス、六十五歳を超えた人が感染すると、死亡率が格段に高くなる。はっきり言って、英国の病院で亡くなった方の八割以上が六十五歳以上である。ロックダウンの数週間前から、英国政府は七十歳以上の国民に、十二週間の「外出禁止令」を出した。この年齢層の人は、買い物へも行けないのである。ボランティアが募られ、幸い何十万人もの人がそれに応じ、老人世帯の買い物を引き受けることになった。
爺ちゃん婆ちゃんの楽しみ、それは何と言っても、「孫の顔を見ること」。ところが、一歩も外に出られないし、家庭間の移動も制限されているので、孫と会うことができない。それで、孫たちとお祖父ちゃんお祖母ちゃんが「会う」ために、ビデオ電話が爆発的に普及した。「Skype」は老舗だが、「Zoom」、「WhatsApp」、「FaceTime」等のアプリを、ごく普通の人々がガンガン使い始めた。うちの妻もオンライン授業の必要に駆られ、これらを入れることになる。妻は元々コンピューターに疎い人、結局、僕が「Skype」や「Zoom」、支払いのための「PayPal」などのセットアップをやり、彼女に使い方を説明した。
「これって、あなたの金儲けの手伝いなんやし、コンサルタント料欲しいわ。」
冗談を言う。元コンピューター会社の社員を夫に持って、妻もラッキーだった。
オンラインの影響は、子供たちにも及んでいる。これは友人のYさんが、五月末になり、ロックダウンの緩和後、久しぶりに孫の家に遊びに行ったときの実際の会話。
その一:
お孫さん:このキャンディもっと欲しい。
Yさん:これは日本で買ったから、今度日本に行ったら買ってきてあげるね。
お孫さん:日本はもうOpen(オープン)したの?
その二:
お孫さん:叔父ちゃん(Yさんの息子さん)としゃべりたい。
Yさん:じゃ、電話しよう。
お孫さん:Zoom(ズーム)かFaceTime(フェースタイム)でしょ。
その三:
お孫さん:お腹すいた。なにかdelivery(デリバリー)頼んで。
長い間外食も出来なかったからね。小さい子供たちも時代の変化を学んでいる。
長い冬の間の干草生活の後で、生えてきた若葉は格別に美味しい。