青い帽子のネパール人
レーマー広場のクリスマスマーケット。この写真の印象以上に人が多かった。
午後二時にマーブルクからコンスタンツ行きのインターシティに乗る。この列車、ハンブルクを午前十時半に出発し、十時間かかってドイツを北から南へと縦断、ボーデン湖畔のコンスタンツに夜八時半に着くという長距離列車である。僕はフランクフルトで降り、夕方、ニース夫妻と一緒に、レーマー広場のクリスマスマーケットを見ることになっている。サヨコ、ヴェルナーご夫妻とは初対面。彼らは僕の従妹のサチコの友人で、数年前サチコがフランクフルトを訪れていたとき、電話で少しだけ話したことがある。今回、サチコにご夫妻を「正式」に紹介してもらったのだ。
彼らは僕をフランクフルト中央駅のホームで迎えてくれることになっていた。しかし、お互い初対面、何か目印が必要。僕は、青いLAドジャースの野球帽をかぶっていくことにした。また、僕は職場の近くを散歩しているとき、いつもネパール人と間違えられる。
「青い野球帽をかぶったネパール人。」
を見つけてくれるように、僕はサヨコさんに頼んでおいた。しかし、列車を降りたアジア人はおそらく僕ひとり、ホームにいる日本人とドイツ人のカップルも彼ら一組、わけもなく僕たちは出会うことができた。
予約しておいた旧市街のホテルでチェックインを済ませるために、「Uバーン」(地下鉄)でコンスターブラーヴァッヘへ向かう。道中、僕はご主人のヴェルナーさんが、ローカル週刊新聞で働いておられることを知る。
「編集長ですか?」
と聞くと、
「オーナーですよ。」
とのこと。オーナーと言っても、長時間労働で、一人で何役もこなさねばならない苦労話を聞く。奥さんのサヨコさんは、パッチワークキルトをやっておられるそうで、それが縁で、従妹のサチコと知り合ったとのこと。「作品」を見せてもらうのが楽しみである。
フランクフルトへは、かつてマーブルクに住んでいた頃、毎週のように買い物に来ていた。そのときは、結構地理に詳しかったはずなのだが、二十年以上の歳月は、その地理感覚を完全に消し去っている。地下鉄を降りてから、僕は百八十度反対の方向に行こうとした。
チェックインを済ませて、クリスマスマーケットの開かれているレーマー広場へ向かう。有名なショッピングストリート「ツァイル」を横切ると、「ドーム」(大聖堂)が見えて来る。大聖堂の前は工事中。そこを抜けるとレーマー広場である。百軒以上の屋台が立ち並び、旧市庁舎の前には大きなクリスマスツリーが立てられていた。辺りは既に夕闇が迫り始め、屋台やツリーの灯りが浮かび上がってきている。しかし、すごい人出。人影がまばらだったマーブルクのマーケットは随分違う。新聞によると、二百万人の人がフランクフルトのクリスマスマーケットを訪れるという。一番訪問客が多いのがケルンのクリスマスマーケットで二百八十万人とのこと。しかし、一体どうやって数えるのだろう。
旧市庁舎の前に発つ、巨大なヴァイナハツバウム(クリスマスツリー)。