とにかく広いお庭

 

戦争の絵が壁一杯に掲げられている「戦いの間」。ここの常連はナポレオン。

 

有名な「鏡の間」は文字通り片方が鏡張り。第一世界大戦の講和が行われ、「ヴェルサイユ条約」が署名された場所である。「戦いの間」は、フランスが経験したこれまでの重要な戦争の絵が、壁全体に飾ってある。何と言ってもナポレオンが一番沢山登場している。

 ヴェルサイユ宮殿は結構大きな建物なのだが、もらった地図で見ると、その建物の何十倍もの庭園が広がっている。建物から外の庭園を見ると、人の姿が見えない。開放されてないのかなと思ったら、そうではなかった。余りにも庭園が広すぎて、「人口密度」が低すぎて、人間が見えなかっただけなのであった。

建物を見終わった後、庭園に出る。ルイ王朝時代の音楽が流れており、噴水からは水がほとばしり出ている。しかし、一体いくつ噴水があるのだろう。オレンジの木の植えられた庭園に行ってみる。オレンジの木は地面に直接ではなく、緑色の箱に植えて並べられている。日曜日の正午前の時間なのに、そこにいるのは、僕も含め二、三人だけ。とにかく広大な場所。ロンドンのハイドパーク以上の面積があるのではなかろうか。

庭園を歩いて、離宮とも言える、トリアノン宮殿に行ってみる。途中で、パブリック、つまり誰でも入れる場所になる。ジョギングをしている人、ボートを漕いでいる人、サイクリングをしている人、皆思い思いに天気の良い日曜日の午後を楽しんでいる。

並木道を延々と二十分歩いて、トリアノン宮殿に着いた。つまり、それだけで一キロ半ほどの距離を歩いたのである。トリアノン宮殿の庭に出る。ここまで来る人が少ないのか、庭には全く人影が見えない。庭のテラスから十字型の池が見える。競技用のボートを漕いでいる若者が見える。

ヴェルサイユの庭園は、全てが人工的に加工されている。木でさえも、真っ直ぐに植えられ、真っ直ぐに刈り込まれている。これほど広範囲に、これほど大規模に土木工事を行うことのできた当時のフランス王の財力と権力が、いかなるものであったかを伺い知ることができるというもの。そして、この庭園、当時から一般人の立ち入りを許していたとのこと。

「うちの王様は何と金持ちな。それに比べて俺たちは・・・」

当時の人々も複雑な気持ちであったに違いない。革命も起こるでしょう。

一時半ごろにヴェルサイユを発ち、パリに戻る。今日はもうふたつパリで見ておきたいものがあった。「ムーラン・ルージュ」と「オペラ座」である。数年前、ニコール・キッドマンが主演した「ムーラン・ルージュ」という映画を見た。また数週間前、パリのオペラ座を舞台にした「オペラ座の怪人」のミュージカルを見た。その場所を是非記念に訪れてみたかったのである。

まず、ムーラン・ルージュ。赤い風車のあるキャバレー。風車は何となくくすんでいて錆色に見えた。そこからオペラ座まで歩く。観光地を巡るのもよいが、こうやって、何気ない裏通りを歩くのも、色々新しい発見があって良い。人々を観察しているのは楽しい。

 

オレンジの木の並ぶ庭園。日曜日の午後なのに人がいない!広すぎるだけ。

 

<次へ> <戻る>