エッフェル塔は何色？
アンヴァリッドの正面。屋根の上のキンピカの飾りが眩しいほど。
ヨーロッパに着てから、「大聖堂」、「カシードラル」と呼ばれる教会を何十、何百と訪れた。ノートルダム寺院も建物や内部はそれほど特殊だとも思わない。これまで見てきた「大聖堂」と似たり寄ったりである。しかし、何と言っても、セーヌ川の中洲に立っているという立地条件は最高、ここに勝る場所にある教会はまずないと思う。何とリッチな立地。青空と朝日を反射するセーヌ川が美しい。寺院の横の川沿いの散歩道を歩く。
「ミーはパリにいるざんす。」
という感激がジワジワと湧いてくる。
ノートルダム寺院を後にする。次の目的地は「アンヴァリッド」。ホテルでもらった地図を見て、回る場所と順番の見当はつけてきている。パリの地下鉄、「メトロ」に乗って二駅目のアンヴァリッドで降りる。しかし、変わった名前である。英語で「invalid」と言うと、「身体の不自由な」という意味。それもそのはず、この建物、ルイ十四世が戦争で傷ついた兵士のために建てた病院、日本語では「廃兵院」と訳されているらしい。「廃兵」というのもひどい訳だと思うが。
駅を降り、広い公園を抜けて建物の中に入ると、中庭には沢山の大砲が展示されていた。奥に金色の飾りのついた丸屋根が聳えている。建物も庭も、見事に手入れが行き届いている。中は軍事博物館になっているらしいが入らない。今日の目標は、
「ひとつでも沢山の名所を回ること」
なのである。昨日朝食のときに会った、日本人の団体さんに負けてはいられない。変なライバル意識に燃えている僕。
アンヴァリッドを出ると、道路に落書きがしてあった。格子になったマンホールの蓋を人間の肋骨に喩えて、骸骨の絵が書き加えてえる。なかなかお洒落な落書きで、気に入った。写真に撮る。
お次はエッフェル塔。ここも最初から登る気はない。今日は下から見るだけで十分。アンヴァリッドからさらにメトロに乗り、二駅先で降りる。昨日辺りから考えているのだが、エッフェル塔が何色であるか、どうしても思い出せない。何となく緑色だったかなと想像していた。しかし、エッフェル塔は薄茶色に塗られていた。そして、何処までも蒼い空に突き刺さるように聳えていた。エッフェル塔には、四本の足のどこからも登れるらしいが、それぞれに待つ人の長い列が出来ている。
アフリカ系、アラブ系の若者が、「ホームレス救済のための署名と募金」を呼びかけている。
「嘘つけ、全部自分のポケットに入るくせに。」
しかし、僕は空港からの電車の中で、それにウカウカと引っかかり、五ユーロの募金までしていた。ちゃんと英語で書いてあるので、何となく信じ込んでしまったのである。
同じく肌の色の浅黒いお兄ちゃんたちが、エッフェル塔の模型や、偽物のブランドのハンドバッグを売っている。塔の足の下に、設計者のひとり、ギュスターヴ・エッフェルの像があった。この塔は一八八九年の万国博覧会のために建てられたものである。
アンヴァリッドの前にあった落書き。パリって落書きまで洒落ているじゃありませんか。