外国人軍団
「コシ・ファン・トゥッテ」のポスター。ロックコンサートではありません。
スミレと外に出る。金曜日の夜のウェスト・エンドは昼間以上に人手が多い。特に若者が。これからクラブ(ディスコ)に行くのだろうか。パンツの見えそうなミニスカートの、スミレくらいの年齢のお姉さんが多数歩いて、ついついそちらに目が行ってしまう。
外は結構寒い。
「寒いね。」
と言いながら、スミレと腕を組んで、人通りの少ない裏道を選んで、足早にレスター・スクエア駅に向かう。
駅も満員。肩の露出した本当にパンツの見えそうな短いワンピース姿の若い女性を見て、ふたりで驚く。僕はジャンパーのチャックを一番上まで上げて顎を埋めているし、スミレはマフラーを首にグルグル巻いている。
「いくらこれからクラブに行くからって、あれはちょっとやりすぎよね。」
とスミレが言った。
帰りの地下鉄の中で、買ってきたパンフレットを見る。
最近、イングランドのサッカー、プレミア(一部)リーグでは強いチームには英国人がほとんどいなくて、ほとんど外国人で戦っている。パンフレットの配役欄を見ると、英国のロイヤル・オペラやロイヤル・バレーでも、その傾向は著しいようだ。今日の「コシ・ファン・トゥッテ」の配役、殆ど六人の歌手だけが登場するのだが、
● フィオルディリージ(姉)=マリア・ベングソン(スウェーデン人)
● ドラベッラ(妹)=ジュルギタ・アダモニテ(リトアニア人)
● フェルランド(妹の恋人)=パヴォル・ブレスリク(スロヴァキア人)
● グリエルモ(姉の恋人)=ステファン・ドゥグー(フランス人)
● アルフォンソ=トーマス・アレン(アイルランド人)
● デスピーナ(召使)=レベッカ・エヴァンス(英国人)
何と英国人は一人だけ!
同じロイヤル・オペラ・ハウスを本拠とするロイヤル・バレー団も、最近は国際化が進んでいるらしい。今度中国に公演旅行に出るらしいが、何と、団員の三分の一近くが、中国人だそうだ。
気がつくと、スミレが僕の肩を枕にして眠っていた。
眠いのに最後まで寝なかったポヨ子さん。
(2010年9月)