また来たい?

 

ロブスターとムール貝を前に。レストラン「モート」は魚市場の隣。

 

さて、僕たちの七日間のコーンウォール滞在も、最後の夜を迎えた。僕たちはポート・アイザックの魚料理で有名なレストラン「モート」に食事に行った。外食するのは初めて。宿のあるポート・ガヴァーンからポート・アイザックまでは、坂を上って岬を回り、また坂を下りるという、普通なら二十分くらいのコース。低気圧「アレックス」の勢いは相変わらずで、激しい風。岬には高い波が打ち寄せていた。波しぶきが、崖の上の遊歩道のところまで飛んでくる。辺りは、本格的に暗くなり始めていた。その日は、波の泡が空中にフワフワと漂う「波の花」という現象も起きていた。(冬の日本海ではよく起こるらしいが。)

レストランで、「ロブスター」、「ムール貝」、「魚のパイ」、「カニのパスタ」を注文する。材料が新鮮なので、美味しい。食事をしながら、

「次の休暇も、また、ここへ来たいか?」

という話題になった。

「わたしは、ここへ来て、またあの家に泊まりたいわ。あの家、大好き。」

とミドリが言う。確かに僕たちが滞在した「丘の上の白い家」は、景色が良いし、海が見えるし、静かだし、広いし、清潔だし、設備は整っているし、とても住み心地の良い場所だった。スミレはなかなか良い家を選んでくれたと、彼女に感謝する。

「パパも、もう一度ここへ来たい。」

と、僕も同意する。新鮮な魚が、歩いて行ける範囲で手に入るというのは、何と言っても魅力的。一口で「新鮮」と言うが、「その日の朝まで泳いでいたことが保証されている魚」って、そんなにないよね。ロンドンには十数軒日本食料品店があって、刺身に出来るような魚が手に入る。でも、僕が住んでいるのはハートフォードシャー。ロンドンまではちょっと遠いし、値段も高いし。

「次は、日本酒を一本提げて来て、毎晩、刺身で一杯、ああ最高!」

 スミレは、

「ここも良い所だけど、コーンウォールの別の面を知る上でも、次は別の場所に泊まりたい。」

と言う。妻は、どちらでも良いと言った。夕食後、また、風に飛ばされそうになりながら、宿まで戻る。

 翌朝九時、僕たちはポール・ガヴァーンを出発した。コロナ対策とあって、使ったシーツは、自分たちで外して、黒いゴミ袋に入れることになっていた。また、タオルやマットは、直接洗濯機の中へ。つまり、掃除の方が、僕たちの使ったシーツやタオルに手を触れないで済むように、ということだ。換気のために、全ての部屋の窓をひとつだけ開けて、僕たちは宿を出た。

 英国の西半分は、まだ「アレックス」の影響下にあった。エクセター、ブリストル、レディングと高速道路を走っているとき、何度か、激しい雨に見舞われる。ロンドンに近づいたとき、やっと雲の間から、青空が見え出した。

 

魚選びは僕にとって至福の時間。どれも買いたい。

 

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